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神田との任務から、私は誰かの後方支援として任務をこなすことになった。確かに、演奏中は無防備になることが多いから正しい判断だと思う。
今回で任務に出たのは14回。単独任務は3回程、その他は、誰かと一緒に行くことが多い。


「間に合わなくて、ごめんなさい」


大粒の雨が降る、どんよりとした空に向かって呟く。救えなかった命は疾うの昔に両手の数を越えた。

雨が私の身体を濡らす。
神の使徒と言われても、守れるのは私の手が届く範囲だけ。私達エクソシストが現場に着いても、失った命は取り戻すことにならない。解っているつもりだ。
それでも、後悔しか心に浮かばないのは何故だろうか。

異世界タイムスリップとしても、彼らはここに生きているのだ。息をして、話して、笑いかけてくれる。


「ねぇ、リナリーは辛くないの?」


今はここにいない彼女に声をかける。リナリーは怪我をして一足先に本部に戻った。
リナリーが原作でアレンに溢していた言葉を呟く。


「仲間がひとり死ぬことは、私にとって"世界"の一部が滅びるのと同じこと、」


きっと、優しい彼女の事だから死んでしまった探索部隊のお葬式に出て謝るのだろう。守れなくてごめん、と。


「もっと、強くなりたい」


エクソシストの存在意義は、救う事より、AKUMAを破壊して戦争に勝つことなんだろう。
何時か物語が始まったとき、私は誰かの命を天秤にかけて選ばないといけない。


「誰にも負けない」


AKUMAにも。まだ見たことのないノアの一族にも。
ディシャも、スーマンも、必死で生きている。それでも、時が来れば選択しないといけない。まとまらない考えのまま空を見上げていると、近くでパタパタ飛んでいたゴーレムが着信を知らせてくれた。


〈―ザザッ、奏、聞こえるか?〉
「うん、聞こえるよ」
〈コムイから指示が入った。ここから北へ20kmの所でAKUMAが確認されたらしい〉
「了解ー」
〈リナリーが帰還したらしいが、一人で大丈夫か?〉
「大丈夫だよ、マリ。ほんと心配性だなぁ」
〈…気を付けろよ〉


ありがとう、と言ってからマリとの通信を切る。確か、マリは神田と25km東の地点で戦っている筈だ。

あっちはまだ終わってないのか。助けに行きたいのも山々だが、私にはするべき事があるようなので、渋々だが次の地点へ足を向ける事にした。




神の使途、と呼ばれても
(大丈夫、物語が始まるまで時間はある)



title:花色奏鳴曲