03

突如と現れた家の中に入り、ようやくマントを外した魔女さんは金色の髪と相まって凄く美人さんだった。見とれていると席に座るように促されたのでそれに従えば、何処からともなく入れたての紅茶とスコーンが現れた。すごい。


「さて、じゃあご質問をどうぞ?」
「魔女さんは、私がいきなりここに来たことに関わってますよね?」


魔女さんも席に着き、質問を促す。回りくどく聞いても仕方がない気がして単刀直入に尋ねた言葉に、魔女さんは一つ頷いて言葉を続けた。


「実はね、私の森でイノセンスを見つけてね。どうにもこうにもならないから、魔術を使って適合者を呼び寄せる事にしたの」
「…」
「言葉が通じない可能性は予想してたんだけど、まさか異世界の子が来るとは思ってなかったわ」


魔女さんは言葉が通じない可能性を考えて、森から来て魔女の紋章が入った楽器を持った子を保護してほしい、と町に最初からお触れを出していたらしい。だから私はあの村で生きることが出来たのか。
話に突っ込みどころは満載だが、そこでふと気がついた。


「異世界…?」
「あら?気づいてなかったの?」


魔女さんによると、この世界は暗黒の三日間を再来させようとしている千年伯爵と、それを阻止とする黒の教団との戦いが行われている世界。
つまり私は、エクソシストがいるあの漫画の世界に来てしまったようである。作中でも、仮想19世紀と言っていたぐらいなので、トリップと言うよりは、異世界タイムスリップと考えた方がいいのかな。もうよく分からないな…。


「あまり驚かないのね」
「冷静さを欠いたら負けだ、と思ってるので」
「変な子」


私の言葉に魔女さんは目を丸くして驚いて、コロコロと綺麗に笑う。


「つまり、私は適合者と言うことですか?」
「えぇ。そしてあなたのイノセンスはこれよ」


そう言って魔女さんが差し出したのはあの楽器。この世界に来た日にお爺さん――町長のマルクさん――に取られて何処かへ行ったあの楽器だ。
私の疑問が解ったのか魔女さんは、あの日すぐに私が預かってたの、と言った。


「あの…一つ疑問があって。私が元いたところの時間は、どうなっていますか?」
「奏は異世界の、それに未来から来たことになるのよね?」
「えぇ」
「なら、大丈夫よ。過去に来たなら未来の時間は進まないわ」
「良かった…」


異世界に来たと聞いて、一番気になったこと。私がいたあの場所の時間は進まないと聞いて安堵する。


「でもね、あなたの年齢のままじゃ体力的に困るから若返りの術をかけたわ」
「えっ!?何時ですか?」
「あら、気づいてなかったの?初めて会った日にしているわ」
「…それで若返ってたのか」


思いがけず肌のハリの謎も解けて、魔女さんからある提案をされた。
このままの生活でもいいけれど、咎落ちの可能性もあるので毎日森に通ってイノセンスを扱えるようになること。強くなれるなら、とその条件を呑んだ。このまま行けば遠からず漫画で読んだ通りに物語は進んでいく。そのときに、助ける事が出来る命は全て救いたい。
ともかく、今は生きるのに精一杯で何ともならないけれど。いつか、黒の教団に行くことがあれば彼らの世界を守れるようになりたいと思った。




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(家に帰ったらクルトにこっぴどく叱られました)