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私が自分自身の制服姿に慣れた頃には、転入してから一週間が経っていた。
隣の席の青空くんは、高校生とは思えない程落ち着いていて一緒にいることが多かったように思う。犬飼くんや他のクラスメイトは、何て言うか騒がしい。だから余り得意ではないのは、ここだけの秘密だ。


「お疲れさま、珠」
「う、わっ」


わしゃわしゃと頭を撫でられてすっとんきょうな声が出てしまって恥ずかしい。それでも気にせずに琥太にぃは頭を撫でる。
初めて来た放課後の保健室は静かで、琥太にぃに学校の話を聞いて貰えば随分楽になった気がした。


「琥太にぃ、聞いてくれてありがとう」
「何かあったら、真っ先に俺に言うんだぞ」
「はーい、」


まだ撫で続ける琥太にぃに抗議の意味も込めて、間延びした返事をすれば、デコピンをお見舞いされた。おでこが痛いです。


「琥太郎先生、元気かー!?」


ガラガラと勢いよく開いたドアの方にびっくりして振り向けば、オレンジ色の髪をした小さな男の子が立っていた。


「直獅、扉ぐらい静かに開けろ」
「ははっ、ごめんごめん…って琥太郎先生この子誰?」


琥太にぃに注意された彼は、疑問の目をこちらに向けてくる。むしろこちらが聞きたいくらいです。


「初めまして神話科1年の紅染珠です」
「あぁ、噂の!天文科1年の陽日直獅だ。よろしくな紅染」


気をとり直して自己紹介をすれば、陽日くんも答えてくれた。天文科1年と言うことは同じ学年なのか。しかしちっちゃいなこの子。


「よろしく陽日くん」
「…ぷっ」
「紅染、なんで君づけ?俺って、そんなに幼く見えるのか?」
「え?」


陽日くんが言ったことの訳が分からずに、オロオロしてしまえば、見かねた琥太にぃが肩を揺らしながら声を掛けてくれた。


「珠、直獅は教師だ、くくっ」
「えぇっ!?こんなちっちゃいのに?」
「チビなのは関係ないだろーー!!琥太郎先生も笑うなーっ!!!」


琥太にぃの言葉にビックリすれば、陽日くん改め、陽日先生は涙目で抗議の声を上げた。琥太にぃは肩を揺らしながら笑いを堪えていた。…琥太にぃ気づいてたなら、もっと早くに訂正入れてよ。


「陽日先生、ごめんなさい!!」
「どうせ俺がチビだから、間違えたんだろ」
「…それは………違います」
「その間は何だよーっ!!」


陽日先生に目一杯謝ったけれど、段々自分の言葉に落ち込んでいくのが可愛くて少しからえば、余計に落ち込まれる。
更に機嫌を損ねてしまった陽日先生に謝り倒して、漸く許して貰えた頃には、日が軽く沈みかけていたのは仕方ないことだと思う。




小さな太陽を見た気がした
(直獅、用事があったんじゃないのか?)
(…あ!)
((陽日先生あほだ))



title:花色奏鳴曲

直獅かわいい