05

琥太にぃに教えてもらった通りに歩いていけば、すぐに体育館らしき建物が見えてきた。時計を見ればだいたい20分前でまだまだ余裕があるので、周り道をしてみることに決めた。



やはりと言うか何と言うか、星月学園は広かった。校舎も綺麗だし、グランドも中庭もお洒落だった。

色んなものがあるんだな、と感心しながら歩いていれば弓道場らしきものが見えて、そこから男の子が出てくるのが見えた。ちらりと見えた顔が、落ち込んでいる様で気になった。


周りを見ながら歩いていれば、男の子は私が来るのを待っていたらしく声をかけられる。


「君も、学校説明会に来たの?」
「うんそうだよ」
「へー。女子がこんなところを受けたいと思うなんて珍しい」
「そう?」


君も、と言うことは彼は中学生の様だ。女子がいることが珍しいらしく、じろじろと見られた。どうやらさっき落ち込んでいる様に見えたのは気のせいの様で、こちらも遠慮なく彼を見る。男の子は中性的な顔立ちをしていたが、前髪がひどくぱっつんなのが気になった。



「うん。ところでキョロキョロしながら歩いていたけど君、迷子?」


そしてどうやら、迷子に見えたので声をかけてくれたらしい。言い方は失礼な気しかしないが優しい。


「迷子じゃないよ。でもありがとう」
「…紛らわしいことしないでよね」


お礼を言えば、ふいと顔を逸らして悪態をつかれる。
何とも中学生らしい反応に笑ってしまえば、少し睨まれた。


「僕は木ノ瀬梓。君、名前は?」
「私は紅染珠、よろしくね木ノ瀬くん」
「うんよろしく、紅染」


名字で呼ばれるのはこちらに来て久しぶりだからなのか、やけにどきりとした。いやいや。相手は中学生だ落ち着け自分。
ふと時計を見れば、説明会の開始まであと10分を指している。


「木ノ瀬くん、もうすぐで説明会始まるから少し急ごう」
「え?…あ、ほんとだ」


木ノ瀬くんに時計を見せて時間を告げる。気持ち早足で体育館の方に向かう木ノ瀬くんと、他愛もない話をした。
話をして生まれた矛盾点をよく考えると、彼は私の事を中学生と思っていることが分かる。だが、どのタイミングで訂正すればいいのかいまいち掴めなかった。



結局言えないまま、体育館に着いてしまった。…もう訂正しなくて良いか。
体育館もやはり立派な造りで、改めて私立の恐ろしさを思い知った。


「中学生は前の方に座ってくれー」


ざわざわとした体育館の前で、オレンジの髪の人が会場への誘導をしているのが見えた。学生だろうか。背があんまり高くないのかぴょんぴょん跳び跳ねていたのが可愛らしい。

誘導された通りに、体育館に入り空いた席に座る。隣は木ノ瀬くんだ。


「紅染がここを受けるなら、楽しそう」
「何で?」
「なんとなく」


何かが木ノ瀬くんのお気に召したらしく、ふふっと笑われる。初対面から失礼だな。一体なんなんだ。


「あ、紅染始まるみたい」
「え?ほんとだ」


木ノ瀬くんが指差す方向を見れば、教員と思われる人が壇上に上がるところだった。
それにしても紅染目立ってるよ、と木ノ瀬くんに耳打ちされ周りを見渡す。広い体育館にかなりの中学生と保護者がいて、よく見れば全員が男子。
もう一度言おう。全員が男子。

確か今年初めて女子生徒が入ったと琥太にぃに聞いた。琥春さんこれ私が通っても大丈夫なんでしょうか。
私の動揺は余所に、教員による学校説明が淡々と始まった。




綿菓子のように、ふわりと
(まじか…)
(紅染?真面目に聞きなよ)
(はーい)