07
あれから数日が過ぎ、とうとう明日から高校生として生活することになる。引っ越しも無事に終え、
あれから幾度も考えたこと。どうして、私はここにいるのだろうか。
もし私が元の生活に戻ったとき、この場所にいたはずの私は学校が変わったことに驚くだろうか。
夢の中で虹のアーチをくぐったのか間違いだったのだろうか。
考えれば考えるほど正解は解らなくなるもので、自分を知ることしか知るすべはないのだと思う。
「ん…」
いつの間に眠ったのか、目を開ければ何時かの夢と同じ光景が広がっていた。どこまでも澄みきった青空と、私の側には虹の麓。
見間違う筈がない。私が夢に見ていて、この世界に来ることになった原因だ。
ふ、と虹の反対側を見れば誰かが立っているのが見えた。その誰かは、こちらに歩いてきて、私の足も自然にそちらに引っ張られた。
「こんにちは、珠さん」
「っ!?」
近づいてきたのが、"元の私"にそっくりで、びっくりして声が出ない。そんな私と違って、正面に居る"私"は私と同じ声を響せた。
「ねぇ、珠さん」
「…何?」
「私と取引しない?」
「取、引?」
"私"の発した言葉に戸惑っていると、"私"はへらりと笑って、難しい事じゃないよ、と言った。
「私と生きる世界を交換しない?、って事」
「どういうこと?」
「母が死んだその世界には居たくないの」
"私"は言葉を続ける。
「それに、珠さんはこの世界に少し飽きていたでしょう?」
「なん、で」
「大丈夫よ。ちゃんと珠として生活できてるから」
「だから、ね?」
物腰は柔らかいが、彼女の言葉には有無を言わせない何かがあった。
"私"と私は中身が逆になっているんだから、私の方が年上の筈なのに、なんて訳のわからない考えが頭の片隅に出てくる。
「ん、じゃあ1年期間を頂戴。その時珠さんが帰りたいと思えば、いいよ」
「…わかった」
「やったぁ!ありがとう」
拒否したって良かったけれど、ここで拒否すれば"私"が壊れそうな気がして了承する。私の言葉に彼女は飛び上がって喜んで帰っていった。
何か上手く丸め込まれた気がする。期限は一年。でも私は帰ることが出来ないんだろうな、なんて思った。
A secret flower garden
(それはただの予感)
title:恋のお墓
期限付きの異世界