白うさぎの。

オレは“白うさぎ”。この世界で生き、この城で働くうさぎだ。

だがオレには、もう1つ別の役目が存在する。

それは、こことは違う別の世界で“アリス”と成り得る人物を見定めて、この世界へと案内する事だ。

そうやってこの世界にやって来た奴は“アリス”をまっとうして、もとの在るべき世界へと帰って行く。

それがこの世界での決まりだ。オレ以外の奴が“アリス”を導いて帰り道を示す。

それでもたまに迷ったままの奴がいる。迷った奴はもう“アリス”じゃねえ。

“アリス”ではなくなるんだ。


この世界で今生きている奴は全員、“アリス”としてオレが連れて来て、迷った奴だ。

“役”としての存在が、この世界に生きる最低の条件だ。

“役”でも迷った奴は消える。何処に行くかなんて、オレは知らねえ。


オレはただの“案内人”で“白うさぎ”。

もう最初からこの世界にいるのはオレだけだ。最初の奴はとっくに消えた。



なあ、リデル...お前はいつまでオレの傍にいてくれるんだ?

オレを“白うさぎ”と呼ばず、“ハクヤ”と呼んで...お前の膝の上へと誘う。

お前は何でそんなに特殊なんだ?普通、“役”になったらこの世界の奴になる。

別の在るべき世界の記憶もすべて忘れる。その“役”になっちまうのに...

何でお前は変わらないんだ?

オレが“アリス”を連れて来ない間、お前はまるで“アリス”だ。

“ハートの女王”をまるでみせない。それに、もとの在るべき世界の記憶も持ったままだ。



『ハクヤー!どこにいるの?』

いつものように、オレをリデルが呼んでる。

『早く来ないとあなたの首をはねるわよ?』

“首をはねる”は“ハートの女王”の言葉だ。だが、言い方はリデルのまま...変わらない。

お前は“ハートの女王”になっても...

『見つけたハクヤ。いるんなら早く来てよ。ハートの女王がうさぎを探してるなんて変でしょ?』

“ハートの女王”がオレを含め、他の奴をかまうのも変なんだがな。


じっとオレを見つめるリデル。分かってる。人型よりもうさぎの姿の方が好きなんだろ。

オレがパッとうさぎに戻れば、お前は嬉しそうに笑ってオレを抱き上げる。


 ̄ ̄ ̄ーーー_____

「ところで執務は終わったんですか?」

「えーまたあとでするから」

「ダメです。終わらせて下さい」

「ハクヤのいじわるーー!!」


ずっと続いてほしい。

[ 42/66 ]
[*prev] [next#]
[戻る]