目を開けたら

僕が目を開けると、目の前には大きな大きな柱時計が遥か上から見下ろす鬼のように主張していた。
ここはどこぞのガリバーかと内心ツッコミを入れ、これは夢だと自分に言い聞かせた。だってこんなに大きな柱時計があるはずがない。
こんなにも大きな壁掛け時計があるはずがないんだ。

僕はきっと変な夢を見ているに違いない。
いや、誰でもいいからこれを夢だと言ってくれ!
僕はどこもおかしくないと安心させてくれ!


僕の手はどこにある?僕の足はどこだ!?僕の顔はっ...!

動かせない。

僕の体のはずなのに...

動かない。

まばたきすら許されない、こんな体があるのか!?



僕はいったい、どうなったんだ...?

夢から覚める定番をやろうとしても、頬をつねる僕の指は無い。

この場所は薄暗い部屋、大きなカーテンの隙間からランダムに射し込む車のライトの光。
時計以外誰もいない、とても静かな部屋で...とてつもない恐怖を感じる。


こわい、怖い、恐い!!!



上から見下ろす彼らは僕を嘲笑うように夜の12時を告げた。





廃れた商店街にある古い時計店。
老いた店主が店の入り口のシャッターを開けて中に入る。体に有害そうなくらいホコリの舞う店のケースに飾られた、たくさんの腕時計の中の1つ。

それが、僕だった...。

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