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太陽村。今期もまた、大人達は魔族への“捧げ物”について揉めていた。
大人達はピリピリとし、長の顔はいつも以上にシワが寄っている。
長の曾孫である12歳のルキリアは、そんな大人達を察して歳の離れた、まだ赤子の従妹を抱いて村の端にある湖へと来ていた。

「大人達は魔族を悪いものと決めつけてる...しかたないことかもしれないけど、ルキアにはそう思わないでほしいな」

湖に足をつけて、ルキリアは自分の腕の中で眠る赤子の従妹に語りかけた。
風が吹き、ルキリアの長く綺麗な黒髪を風がさらう。ルキリアは静かに湖のあちら側に見える魔城を見上げた。

「ねえ、ルキリア。その子供は喰べても良いですか?」

一瞬、太陽の光が大きな何かに遮られたかと思うと、ルキリアの隣に立つ1人の青年。空色の腰まである長髪が風に揺れている。
不思議な空気を纏う青年の、ルキアを見る空色の瞳は獣が獲物を襲うときの視線と同じである。

「ダメよ!この子は私の従妹のルキア」

駄目だと彼に言うルキリアに、まるで叱られたかのように青年はシュンとしてうなだれてルキリアの傍に座った。

「クーファッシュって、やっぱり魔族として変わってるよね」

「そうですか?おれは変わっていますか?」

ルキリアにクーファッシュと呼ばれた青年は不思議そうに首を傾げた。彼は人間の姿をしているが魔族である。
実はルキリアとクーファッシュはある人物の紹介で出会っているため、普通の人間と魔族の喰う喰われるの関係ではない。

「私はね、そんなあなたが大好きなの」

顔を少し赤くして、ルキリアは嬉しそうに言う。クーファッシュも嬉しそうに微笑むと、ルキリアの頬に触れるだけの可愛らしいキスを落とした。

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