デートのお誘い


「‥そしたらその人が私のいとこだったの!」
「へえー、良かったじゃん。 ‥‥いとこって男?」
「うん、そうだよ。それでね、その従兄弟がー‥‥」

そのままペラペラと従兄弟の話をしているけど、本当に言いたいのはこの最後の部分なんだ。なんと、その従兄弟がーーそう意気揚々と口にしようとした瞬間、鳴ちゃんの手が、力強くわたしの腕を掴んでいた。

「なまえってさ、誰のものなんだっけ?」
「え」
「誰のものなんだっけ?」

光のない目で此方を見つめながらずいずいと近づいてくる鳴ちゃんに、わたしは思わず後ずさる。

「わ、わたしはこれでも1人の人間なので、誰のものとか、そういう‥」
「御託はいいから」
「う」

とうとう壁にぶつかってしまい、逃げ場のなくなったわたしは、泣く泣く「鳴ちゃんのものです‥」と半ば疑問形で呟く。すると鳴ちゃんは更に機嫌を悪くして、わたしにこれでもかと言うくらい顔を近づけ始める。

「なんで俺に訊いてんの?俺が訊いてるんだけど」
「はい!鳴ちゃんのものです!ごめんなさい!!」
「‥‥‥」

怖くて目を瞑りながら叫ぶようにそう言うと、鳴ちゃんは腕から手を離してようやく怖い顔をやめてくれた。

「わかればいいんだよ。もう二度と他の男の話なんてしないでよね」
「う、あの、でも‥最後に1つだけ続きがあって‥‥」
「‥‥また痛い目みたいんだ?」
「ちが、あの!待っ、その従兄弟が鳴ちゃんと休みの日にデートでも行ってきなって遊園地のチケットをくれたので行きませんか!!!!!」
「えっ」

痛い目を見たくはないけどどうしても伝えたくて大きな声で息もせず一気にそう叫ぶと、鳴ちゃんは急にへなへなとしゃがみこんで、

「そ、そういうことなら早く言ってよ!もー!!」

ヤキモチ焼いてバカみたいじゃん!!とわたしに負けず劣らずの大声と赤い顔でそう言った鳴ちゃんは、なんだかとっても可愛くって、わたしは頭を撫でてあげた。よかった、いつもの鳴ちゃんだ‥!


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