ツーアウト、
別に、特別かわいいとか、美人だとか思ったわけではなかったけれど。
あ、この子だなーと思った。
ありきたりな言葉で表すなら、運命だろうか。一目惚れをしてしまった実感はない。
けれど、彼女を手に入れなければという、使命感はある。
本能が「この子でなければいけない」と訴えかけてくるような、そんな気持ちだった。
「苗字さん、これ借りてたプリント。貸してくれてありがとな」
「あ、うん‥」
そう席替えの日に感じて、俺はすぐさま行動に乗り出した。
長期戦になるだろう予感はしているが、長々と意味のない延長戦を続けるのは趣味ではない。
仕掛けるなら、早いほうがいい。
「あ、よかったら名前の下のとこちょーっと見てほしいんだけど」
「? うん‥‥?」
机の中にしまおうとしたプリントをぺらりと、もう一度目の前へ翻す。ゆっくりと名前の欄へと視線をやり、その下部分へと‥‥
「‥‥‥‥え」
そう言って固まって、数分。
少なくとも、カップラーメンはできるくらいの時間は経ってから、彼女はようやく音を立てて顔を真っ赤にし始めた。
「そ、そんな、すすす、好きとか、急に言われても‥っ!!」
「嫌?」
「っい、いや、というか、あの、えと、困る‥‥!」
「困るってことは、俺のこと苦手ってこと?」
「えっ?!!あ、いや、そういうわけじゃ、えと、えと、あの‥‥!!!」
大方、そんなふうに考えたことがなかったとか、そういうとこだろう。今のも「御幸くんを傷つけたいわけでは」、とか、そういう。
「う、うう‥‥ごめんなさい‥‥あ、あの‥‥」
どうやら、まだまだ試合は続くみたいだ。
「せ、せめて、お友達からにしてください‥っ!」
「! ‥言ったな?」
「‥‥え?」