支配欲に鉄槌を



「え、家帰ってくる?」

「おー、ちょっと近くに寄ることになってさ」
「いやいやいや私その時間講義だし実家にでも帰りなよ」
「なんでだよ、今日くらいサボれサボれ」
「は?」
「冗談だって!まあとにかく、その日家帰るから。じゃあな」

抗議する間も無く切られた電話に、またモヤモヤが募る。一也に対する不平不満と、久々に一也に会えるという幸せな気持ちが、反発しあって気持ちが悪かった。

そして結局、その日一也が帰って来たのは電話で告げた時間より何時間も遅い夜のことだった。


「だから、一也の都合で振り回さないでって言ってんの!」
「そ、そんな怒んなよ‥」
「こっちは一也が来るからって前もって講義も休んでご飯の準備もしてたのに‥!」
「悪かったって、ごめんな?まさかそんなことしてくれてるとは思わなくてさ‥」
「もう少し、私のこと考えてくれてもいいんじゃないの‥‥」
「え、」
「一也はそりゃあ、野球のことばっかで、私のこと考える暇ないかもだけどさ‥」
「‥‥」

そこまで言ってから、一也が黙り込んだことに気づく。怪しんで顔を上げれば、そこにはやたらと嬉しそうな顔をした一也が私を見下ろしていた。

「な、なんでニヤニヤしてんの」
「んー?いやー?別に〜〜?なまえって俺のこと大好きなんだなーと思って?」

目の前で顔をこれでもかと表情を崩す一也を見て無性に顔が熱くなって来た。
テレビに映る一也を見た時のモヤモヤと似てる。なんだろ、なんだか無性に‥‥ 私は自分の気持ちに正直になって、一也の顔にグーパンを決めた。



『御幸選手、その顔の怪我は‥?』
『あ、これ?いやー随分と照れ隠しが激しい彼女で、ハハ』


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