Merry Xmas
「おかえりなまえ!」「め、メローネ…その服装なに…」
家に帰ったらサンタクロースの格好をしたメローネが玄関に立っていた。ただいまも言い忘れて呆気にとられていると、メローネは「いいからいいから」と私の手を引いてリビングまで連れて行った。
「どうだ?オレにしては頑張ったと思わないか?」
ワンルームの小さな部屋にツリーやらサンタのぬいぐるみやらが所狭しと並んでいる。天井から輪飾りと電飾が垂れていて、今日という日がわかるにふさわしい彩りがなされている。
「今日って、クリスマス…?」
「そうだぜ。向こうで言うならBuon Natale!って日だな」
「仕事ばっかりで気付いてなかった……」
去年も一昨年も、一人暮らしなうえ仕事が忙しくってまともに祝ったことがなかったのですっかり忘れていた。街並みもチカチカ賑やかに煌めいていたけれど、それは今月に入ってからずっとだったし。
「メローネ、こういうの興味ないかと思ってたよ」
「一人の時はな。でも今年はなまえがいるだろ?」
やんわりと残る暗殺者だった頃の記憶に惹かれるようにイタリア旅行に行った今年のGW。偶然出会った(再会と言うべきかもしれないけれど)メローネとなんやかんやで付き合うことになり同棲することにまでなるとは思いもしなかった。
夢で見たような薄らぼんやりとした記憶なので確かなことはわからないけれど、お互い恋愛感情なんて抱いていなかったし抱かれてもいなかった…と、思う。運命のいたずらというやつだろうか。
「あ、ご飯まで作ってくれてる!」
机に並ぶご馳走は手作りのようで、時折目につく不格好な形をした食材は、胸が弾むのに充分だった。
「おっと、食べるのはまだ待ってくれよ」
「まだあるの?」
ぱたぱたとキッチンへ向かい冷蔵庫から箱を持ってきたメローネは、玄関を開けた時と同じく浮かれた様子でこう言った。
「見てくれ!可愛いケーキも買ったんだ!」
わざわざ見せにきたそのケーキは、チョコレートで作られたサンタさんとトナカイさんが寄り添っていて、とても可愛らしいものだった。
「……かわいい」
「だろう?なまえが好きだと思ったんだ」
嬉しそうにケーキの箱を抱えているメローネにまた胸がときめく。
かわいい。
ケーキもだけど、メローネが一番。
そんな恥ずかしいことを口にできるはずもなく黙ってケーキを見つめていると、メローネは少し寂しそうな顔で微笑む。
「あの頃はろくに祝いもできなかったからな」
「メローネ覚えてるの?」
「…多少はな。だから今日はなまえと祝えてよかった」
「……サンタの格好じゃなかったらもうちょっとカッコ良かったのに」
照れ隠しでそう言うと、私の分もあると言ってお揃いの衣装を取り出すメローネ。着ないよ!なんてつい突っぱねてしまったけれど、手を洗ってご飯を食べる準備ができたら、着替えてあげてもいいかな。
ほら、今日はクリスマスだしね!