09
『メローネはおまえのことが苦手なんじゃあねーか』。そうプロシュートに言われてから、ずっと一人でぐるぐると考え込んでいた。自分の部屋に帰ろうかと思ったけど、あの後アジトに居たプロシュートもリゾットも、任務があると出かけて行ってしまった。これからここに帰ってくる予定があるのは、メローネだけだ。だからこそ、私はメローネの部屋で待っていたのだ。なのに自分の部屋に閉じこもって出迎えないというのは、普段の行動を考えると変だ。
かと言って、あのままメローネの部屋に居続けるほど私の精神は図太くなかった。
「お、おかえり」
「ただいま」
いつもなら玄関まで出向いて飛びつくところを、おとなしくリビングで言葉だけで迎え入れる。どうかしたか?と訊かれたものの、なんでもないと言ったらメローネはすぐに引き下がった。
しかし納得していないのかこちらをじっと見ているメローネに、申し訳なさを感じながらも、VHSかDVDでアニメが見たいとお願いしてみた。
「なんだ、それで遠慮していたのか?」
「うん…」
「まあ確かに本よりは高いが、それくらい気にしなくていい。なまえのためだ」
なまえのため。その言葉がちくりと胸に刺さった。どうして、メローネは私の望んだことを叶えてくれるのだろうか。
「ありがとう……」
プロシュートの言った通り、私の思い出した記憶通り、メローネは決して自分から触れることがない。何を叶えてくれる時も、メローネは私に触れたくないみたいに距離をとって待っている。それを知らずに触った私を、嫌がる素振りはおそらくない。けれど、そんなことに気付いてしまって、平静でいられるわけがなかった。
「メローネはさ…私のこと嫌い?」
「何言ってるんだ?嫌いなわけないだろう」
「……そうだよね。何言ってるんだろ、ごめんね!」
嫌いじゃないなら、苦手?と尋ねようとしたけど、できなかった。もし苦手だと言われたら、私はどうすればいいのか、わからなかったから。
「(……何かあったのか?)」
明らかに様子のおかしいなまえを、疑問に思うメローネ。突拍子もない質問をしたかと思えば、そそくさと避けるように部屋に戻ってしまったなまえ。誰かに尋ねようにも、あいにく今日はメローネとなまえ以外誰もいなかった。
「精神的に落ち込むことは、昔はよくあったが……」
その問いに答えは出てはいないものの、彼女が望んでいないのならと、メローネはなまえを追いかけず、一人部屋へと戻った。