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「お、はよ…」「おはよう」
ほぼ寝てはいなかったけれど眠気覚ましに顔を洗いに行くと、メローネと出会した。他に家があり好きな方で寝ている一部のメンバーとは違って私とメローネはここに住んでいるのだから、そりゃあそれくらいの偶然起きても当たり前のはずなんだけれど。
なんとなく気まずい気持ちで顔を洗うと、メローネは流れるように新しいタオルを取り出し手渡してくれた。
「あ、ありがとメローネ」
「どういたしまして」
澄んだ空気の中、普段通りのメローネ。暗く沈んでいる私の心の中だけがこの場に不釣り合いで、異質だった。
「やっぱり、メローネは私のこと好きじゃあないんだな……」
家族みたいに思っていたのは、もしかしてずっと私だけだったのか。メローネが立ち去った洗面所で思わず一人そう溢すと、更に気分が落ち込んだ。
なんでもない顔をしてテーブルに座って、メローネと一緒に食べたカントゥッチが、ひどく口の中で主張していて吐きそうだった。
夕方、まだ日の登る前から出かけていたプロシュートが帰ると、帰宅早々にメローネに呼び止められる。
「プロシュート、あんたなまえがヨダレを垂らして大変とか言ってたよな」
不機嫌そうな様子を隠しもしないで壁に寄りかかっているメローネに対し、プロシュートもまた、メローネを煽るような掴みどころのない態度で返事をした。
「あ?言ったか?」
「だが朝なまえはあんたの服もシーツも洗濯していなかった、つまり」
「重要なのはそこじゃあねーだろ」
わずかに見開いた目は、プロシュートの威圧的な態度を見てすぐにまた睨むように細められた。
「オレは強要はしてねえ、あいつが望んでオレの部屋にいるんだ」
「……」
「嫌ならオメーがあいつを呼べばいい話だ、違うか?」
正論を吐かれ、メローネの勢いが弱まる。今の状況は、確かにプロシュートのもたらしたものではあったが、自分の言葉一つで解決する可能性もあることをメローネも解っていた。しかし、メローネはそれが出来ないからこそ、いたずらにプロシュートに文句を投げ続けていたのだった。
「だが、そう望むように仕向けたのはあんたじゃあないのか」
思い出すように視線を逸らすメローネは、文句を言いつつもどこか力がなかった。
「なまえがオレになまえを嫌いかどうかなんて、何も無いのに訊くわけがない。誰かが余計な事でも言わない限りな」
「へえ、そりゃあ悪かったな」
「……あんたに訊いたのが間違いだった」
のらりくらりと逃れるプロシュートにとうとう諦めがついたのか、そのまま自分の部屋へと引き返すメローネ。一瞬見えた充血したような目に、思わずプロシュートが引き止める。
「おい待てメローネ」
「なんだ」
背を向けたまま視線だけを此方にやるメローネの顔色が、なまえの姿を思い起こさせる。
「オメー、最近寝てねえだろ?」
「……心労がなければ寝るんだがな」
刺のある物言いで皮肉を置いて行ったメローネの背に、プロシュートは「心労はお互い様だ」と深く息を吐くのだった。