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電話が鳴ったのを見て、部屋に戻ろうとしていた足を止めた。よほどのことでない限り、帰る前に連絡などしないのに、と。携帯越しに一言二言話したプロシュートの眉が顰められたのを見て、メローネは心臓を掴まれた感覚に襲われた。
ーーーなまえのことに違いない。
そう確信したメローネは息を潜め、安否を問うているプロシュートに近づいていく。少しずつ聞こえはじめた声は、なまえと共に任務に行ったはずのギアッチョの声だった。
『ーー意識はあるみてえだし任務自体は無事終わってる、後は帰るだけなんだがよ〜〜」
「どうした」
意識はある、という言葉にホッとする。しかしそれをわざわざ伝えるということは、意識がなさそうな状態であることに他ならない。まだ安心は、できない。
『プロシュート、今オメーひとりか』
「そうだが」
『ならいいんだがよォ…なまえがメローネに言うなっつーからな…』
「喋れるのか?」
『いや、それっきり一言も話してねえし動きもしねえ。辛うじて生きてはいるがな』
「ーーー辛うじて?」
「!」
盗み聞いていたことも忘れて、口から言葉が滑り落ちる。なまえが隠そうとしていたことも、自身の盗み聞きがバレたことだって、メローネにはどうでもよかった。
自分の心よりも、自分の命よりも、彼女の無事がメローネの望みだった。
『…プロシュート?もしもし?聞いてんのかァ〜?」
「……悪いギアッチョ、メローネの野郎立ち聞きしてやがった」
そうしてようやく、メローネは改めて詳細な状況を教えられた。久々の任務だったが任務遂行まではなんの問題もなかったこと。けれど車に戻り一息ついた瞬間、なまえが倒れてしまったこと。一刻も早くアジトで介抱するために、ギアッチョが今も車を飛ばし帰ってきていること。……なまえが魘されたように、メローネに謝っていることを。
車の音がする。立ち上がったメローネは一目散に玄関に走り、ギアッチョが開けるよりも早くドアを開けた。
「なまえ!!」
ドアの前で立っていたギアッチョは突然のことに目を丸くする。しかしギアッチョの腕の中にいたなまえはその声を捉え、指先だけをメローネの方に伸ばした。
「めろー、ね」
なまえがメローネの名を呼ぶとすぐさまギアッチョからなまえを受け取り、伸ばされた指先を握りしめた。
「一緒に寝よう」
壊れものを扱うように丁寧に、メローネは彼女を抱きしめたまま、ベッドに運ぶ。
やわらかな毛布を被り、温かさに包まれたなまえは、目の前で目を閉じるメローネを見て、次第に眠りにつくのだった。