後顧の憂い
ーーーーこれは、君が今も泣いているだろうと予想して書いた手紙だ。多少予想に誤差があるかもしれないが、その辺は多めに見てほしい。
君も薄々勘付いているとは思うが、オレの仕事は危険な仕事だ。いつも心配をかけて悪かったな。
だが、オレはこの仕事について良かったと思っている。ろくでもないことばかり起こったが、信頼できる、信頼してくれる仲間と出会えた。オレのこれまでの不幸は仲間と君に出会うための布石だったのだろうと今では思う。こんなこと、君にしか言えやしないが。
君と連絡が取れなかった間やっていたことは、仕事ではなく仲間たちと決起したことだ。
成功するかはわからない。ただ、みんな命を賭ける覚悟で臨んでいる。
君は泣き虫だから、こんなこと言ったらまた泣いてしまうかもな。
君はいつか素敵なプロポーズを受けるのが夢だと言っていたな。それを叶えるためにとっておきのプロポーズの文章でも書いておこうかと思ったが、やめにした。
もしこの先君を幸せにする男と被っては可哀想だからな。
だが君が変な男に引っかからないよう、もしサプライズ感が減ってもいいなら、オレが君にする予定だったプロポーズの予定表といくつかのプロポーズ案が書いたノートが置いてあるから、それを見て次の男を見定めてほしい。
式を挙げていないのが心残りだったが、一生に一度しかできないんだ、挙げなくてよかったのかもしれないな。いつか君の理想の場所で、理想の式を挙げるといい。
そして、実は指輪も買ってある。その時によって報酬額が変わるからきっちり給料三ヶ月分、と言うわけにはいかなかったが、仕事十回分以上はあると思うぜ。困った時にでも売って生活の足しにしてくれ。
指輪はオレの机の、鍵のかかった引き出しに入っている。パスワードはオレと君の記念日だ。君には簡単すぎるかもな。
君のことだから、もう机に向かったな?机の棚にあるのは仕事のために使っていた本だが、いくつか子育てにも使える本があるはずだ。利用できそうなら、いつか産まれる君の子どもに読ませてやってくれ。もちろん教育に悪そうなら売っても捨ててもいい。大事なのは君と、産まれてくる子の好みだからな。
この手紙は、読み終わったら破り捨ててくれ。何故ならオレは、すべてが終わったら必ず君を迎えに行くからだ。オレがいるなら、手紙は必要ないだろ?
だがそんなことを言っておいていつまでも迎えに来ないなんて男は言語道断だ。君はそんな男を見限って、もっといい男を見つけて、幸せになるべきだ。
世界一幸せになるまで、当分こっちにはこないでくれよ。
君の幸せを、何より願っている。