第一話
目が覚めると、全身を襲った痛みは跡形もなく消えていた。ゆっくりと頭を動かしてみると、どうやら粉々になった岩の中にいるようだった。起きたと同時に舞い上がった粉塵を払う。砂埃で咽せるのをどうにか抑え込んでいると、同じく粉々になった岩の中で静かに眠っている人がいるのに気付いた。
「シーザー!」
ここがどこかなんて全くわからなかったけれど、目の前に倒れている人がシーザーであることだけは確信できた。おそるおそる近寄り、胸に耳を傾ける。
ーー小さく、息をしている。
目も当てられない状態だが、眠っているだけのようだった。
「生きてる……」
自然と涙が溢れて、シーザーの胸に手を伸ばした。小さく脈打つそれが、かれが生きていると言うことをさらに強く実感させた。それがあまりに嬉しくて、声を上げて泣いてしまいそうだった。けれど、生きていると分かったのだからこうしてはいられない。すぐにどこか休ませてあげられるところを探さなくては。
「カインド・オブ・マジック…もしあなたがスタンドなら…」
夢の中で見たものがスタンド能力だと信じて、シーザーの傷を治せないか試してみる。すると少しずつだけど、手を翳した部分からじわじわと広がるように、シーザーの血が止まり傷が塞がっていった。
「! やった…!」
しかし、シーザーの意識が戻る様子はない。このままここにいても、できることは少ないだろう。
ちらりとシーザーの顔を見る。綺麗な顔で眠っている彼が、また誰かと笑い合える日を想って、落ち込む心を奮い立たせた。
「私一人じゃあ無理かもしれないけど…!」
きっと、シーザーを助けるためならば、力を貸してくれるはず。そう考えてシーザーの身体の下に手を滑り込ませる。スタンドの力を借りてもギリギリだったが、なんとか背負いあげ、歩くことはできそうだった。
「シーザー、待っててね…!」
シーザーに生きてほしい。それしか頭にないまま、ただひたすら歩を進めた。真っ暗な足元を照らす月が、やけに綺麗だった。
▽
「小屋、あったあ…!」
川のほとりに小さな小屋を見つけ、人気がないのを確認してから中に入る。少し前まで人が生活したような痕跡があったが、人はいないようだった。
「お邪魔しまーす…」
ベッドが一つだけある寝室と、簡易キッチンのついたリビングルーム。長居するかは改めて考えるとして、寝るところさえあれば今はそれで十分だ。
カーズに吸血鬼にされたごろつきが住んでいたか、はたまたその吸血鬼に食べられてしまったか……そんなことを不安に思いながらも、既に限界がきていた私は、シーザーをベッドに横たわらせると、そのまま頭をベッドに預け眠ってしまった。