01
ーーー夢を見ていたような気がする。
ぼんやりと歪んだ視界の中、夢を思い出そうとしてみたけれど、ついさっきまで見ていたはずなのにてんで思い出せない。
何か、とても大事な夢を見ていたような気がするのに。
けれど、思い出せないものはしょうがない。もう諦めて起きてしまおう、と意識がクリアになって気付いた。
……ヨダレが垂れている。
「ごめんメローネ!服汚した…!」
いそいそとメローネの服を拭うと、メローネは閉じていた目をぱちりと開けた。とっくに起きていたらしいメローネは、自分の袖で拭っていた私の動作をやんわり制止する。
「気にするな、安眠できた証拠だ」
「おかげさまでよく眠れました」
「それは良かった。服ならまた洗えばいい、なまえが眠れる方が重要だ」
そう言ってパジャマからいつもの見慣れた服に着替え始めたメローネを尻目に、パジャマのまま洗濯の準備をする。この家で一番綺麗なのはメローネのパジャマだと思うくらいには、毎日メローネのパジャマを洗っている。
自分のヨダレがついたままの洗濯物が溜まってるのはさすがに、罪悪感に苛まれるし……というのが一番の理由だけども。
私とメローネはいわゆる幼馴染みというやつで、揃いも揃って同じチームで暗殺者をしているのにはたいして深くもない訳がある。
私が、メローネと一緒じゃないと眠れないのだ。
家族も死んでしまい、唯一の幼少期からの付き合いともなればそうなってしまうのかどうかは、当事者である私もメローネもよく分かってはいない。家族の温もりとか匂いとか、そういうものが安心材料になるのかもしれないし、まったく関係ないのかもしれない。医者に訊いても分からなかったのだから、まあ、生きるのに必要なことはやっていくしかないのだろう。暗殺も、添い寝も。
「なまえ、今日は?」
「明後日か明々後日にプロシュートと任務に行くまでは何もないはず」
「そうか」
メローネも明日には母体探しに行くとかで、夜までに帰ってこられるかわからないらしく、先にベッドに入っていていいと鍵を渡される。はーい、と間の延びた返事をしてリビングに入ると、テレビから昨晩のサッカーを振り返るニュースが流れていた。
「ホルマジオ、おはよ〜〜」
「おう……なんだあなまえ、おまえほっぺにヨダレついてんぞ?」
「え!!?うそ!!!ウワッほんとだ!!」
「ははは、いつまでもバンビーナだなァ」
ホルマジオはちらりとメローネの方を見たかと思うと、笑ってるのか困ってるのかわからない顔をして、テレビに顔を戻した。メローネが「新しいタオルを持ってこよう」と言うので、反論したりなかったけど大人しく顔を洗いに行くことにした。うーん、洗濯する前に顔洗っておけばよかった。