第三話
シーザーの隣で寝てしまった、翌朝。
窓の外から鳥の鳴く声や、翼の羽ばたく音が聞こえていた。さわやかで、心地よい朝だ。
けれど、寝ている私にそれを知る術はない。
久々のベッドで気が抜けてしまったのか、私は今も呑気に寝息を立てていた。なんだか、身体がどっと疲れている。
脳の隅っこで、起きなければいけないと必死に理性が訴えていた。でもそんなことできないと思うくらい、体が重く、動かない。何かに押し潰された感覚と身を削るような痛みがフラッシュバックしそうで、少し怖い。
それら全てをどこか他人事のように俯瞰して考えていると、他人事ではない距離で、人の呻くような声がした。
ーー耳元だ。音の発生源に気付いた私は、慌ててガバリと起き上がる。
「…………」
シーザーの、声だ。聴き間違えるはずもない、だいすきなだいすきなシーザーの声だ。
声も出せずに、シーザーが眉を顰める様子をただただ見守っていると、緩やかに開かれた目が、ぼんやりとした視線が、はっきりと私をとらえた。
「…………きみ、は…」
掠れたような声が、耳に届く。
弱々しい、微かなものだったけれど、それは確かにシーザーから発せられた声だった。
体はまだ動かないようで、『君は』の言葉より先は発する気力もないようだった。けれど確かに、シーザーの瞳は私を見つめていて、シーザーの声は私の耳に届いた。それは、生きている人間にしか、出来ないことだった。
シーザーが、生きている。
その実感が急激に湧いてきて、涙をぽろぽろとこぼしていた私は、気付けばシーザーを抱きしめていた。
「シーザー…っ!よかったぁ……!!」
戸惑うような目でこちらを見るシーザーにも気付かないまま、私は『ずっと願っていたことが叶ったんだ』と、ただただ良かったと泣き続けた。