02 予期せぬ邂逅
「あれ……なまえ……?」
押し入れで座り込んでいるスグリくんは、目をぱちくりと何度も瞬きをして、こんらんしているようだった。
正直私もこんらんしているものの、スグリくんが一番不思議なのはおそらくさっきまで話していた"なまえ"と違うということだと察しがついた。
「は、はじめましてーでいいのかな? 私がなまえだけど……」
「やっぱりなまえなんだ……」
指を突き入れたくなるような可愛い口が驚いたように開かれている。
ここがどこかとか教えた方がいいのかと思ったけれど、揺れる前髪の隙間から見えたスグリくんの瞳は私しか映していない。
「びっくりしたよね!ごめんね!こんな年上で……」
「え!? ち、違う!それでおどろいたんじゃなくて……」
スグリは驚いて開いていた手を顔の前に持っていくと、何か考えるような顔になる。全部画面の中で見たことある動きでどんどん口が緩んでいく。
「見た目さ違うのに 絶対なまえだってわかったからふしぎで……」
たしたししているスグリの腕をじっと見つめながら、私は自分の理性が思いの外ちゃんとあることに感謝していた。
否応なく抱きしめるかと思った。
「でも急にいなくなったかと思ったから、ちゃんといてよかった……」
安心したようにスグリがにへへ、と笑う。崩れ落ちそうになるのを必死に耐えながら、緩み切った口を必死に手で隠した。
「心配してくれてありがとう……あ!スグリも尻餅ついてたけど、大丈夫?怪我してない!?」
「!!」
ひょいと軽すぎる身体を持ち上げてから、自分のしでかしたことに気付く。耐えてたのに触ってしまった──!!!!
「ごごごごめんね急に触っちゃって!!怖かったよね!!」
「だ、大丈夫……」
「体こわばってたもん気使わないでいいよ!ほんとにごめんなさい…!!」
二度と触らないから許してほしい、いや許さなくてもいいから恨むなら今ここに存在する私だけにしてほしい、と口走りかけるも、スグリの顔は心なしか綻んでいる。
「なまえがおねえさんで緊張しただけ……」
「そっ!! そ、そっかぁ……!!」
顔を赤くしたスグリが上目遣いでちらちらとこちらを見てくる。なぜこんなにも好感度が高い状態なのかわからないが、初見でかっこいいと言ってしまうくらいだからこれが普通なのだろうか。
ただ一つわかることは、一刻も早くスグリを元の世界に返してあげなくてはいけない。私が人間を辞める前に。