戻ってきた沢村くんは何やら考え事をして歩いていたようで、数歩歩いては机にぶつかり人にぶつかりを繰り返していた。
「沢村くん、大丈夫‥?」
「‥‥ハッ 大丈夫!大丈夫だぞ?!」
「そ、そう‥‥?」
冷静に考えなくても大丈夫ではない様子の沢村くんに正直ものすごく心配になったけれど、本人が大丈夫だと言うのだからきっとあまり深入りしない方がいいんだろう。
「大丈夫ならいいけど、もし私に手伝えるようなことだったら言ってね」
迷惑にならない程度に、でも出来ることはしてあげたい一心でそう笑いかけると、沢村くんはまたバッと勢いよく下を向いた。顔を下に向けたまま、数回私の方を目だけで見やった。
「‥‥優しーな」
「え?」
「なんでもない!その時はよろしく頼む!!」
顔の向きはそのままに、手をこちらに伸ばす。伸ばされた左手は、親指を立てていた。なんだか体勢がちょっと面白い。
そのあと、何度か沢村くんの視線を感じることがあったけれど、言葉にしなかったので言いたくなるまで待つことにした。
◇◇◇
「ぬおおおおおおお〜〜〜〜!!!」
「さ、沢村くん‥?」
何気なく覗いた練習風景、その隅っこにタイヤを括り付けて走っている沢村くんを見つけて、少し困惑する。スポーツって、やっぱりタイヤで特訓するものなのだろうか‥!疑問はあったけど、目標に向かって努力している沢村くんがかっこよくて仕方がなくて、すぐに忘れてしまった。
しばらくその様子をじっと眺めていたけれど、もし沢村くんが私に気付いて邪魔になってはいけないと、その場を離れた。
「‥‥よーし!」
タイヤを括り付けてダッシュしている沢村くんを思い出しながら、私も夕日に向かってダッシュしてみた。
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