差し入れ持って見に行くね!‥‥なんて、軽率に言ってしまったけれど。差し入れって、何を持っていくのがいいのかな。ここはやっぱり、何か作るべき‥?!とは言っても、特別料理が得意なわけではないし‥沢村くんの好きな食べ物も知らないし‥!
なんて思っていたものの、偶然にも学校で料理の上手い知り合いにアドバイスをいただき、料理が下手でも大丈夫な!おにぎりを!持参した所存です!もしもマネージャーさんが作ってて要らなかったり、お腹空いてないとかそういう気分じゃない場合のためにアイスも買ってきたので抜かりなしです。多分。

「さっ、沢村くん!」

沢村くんの名前を呼んだ途端数人の人がこちらに振り向く。まさか、沢村という名前の人が沢村くん以外にも‥?と思考回路が斜め上方向に働き、恥ずかしい気持ちに耐えながら下の名前で呼ぼうとした。した、というのは、栄、まで発したと同時に、物凄い勢いで走ってくる沢村くんが見えて、肩を飛びあがらせるほどびっくりして結局呼ばなかったからで。

沢村くんはキョロキョロと辺りを警戒するように見回したかと思うと、真っ直ぐに私に近付いてきた。

「苗字!」
「はい!!」
「差し入れか!!俺に!この沢村栄純に!!!」

やけに大声でそう叫んだ沢村くんに、ちょっぴり軍隊にでも入ったかのような気持ちできびきびとおにぎりを提供した。沢村くんはおにぎりを確認すると、嬉しそうに笑って、ひとつ頬張った。嬉しい。沢村くんの笑顔を見るだけで、天国に行ったような気持ちになれる。喜んでもらえて本当によかった。今度アドバイスをくれたお礼を言わないとだなあ。

「練習、まだ見てくよな?」
「うん!沢村くん、頑張ってね」
「おう!」

沢村くんはそのまま元気に立ち去ろうとして、思い出したように振り返る。

「次は歩いて様子見に来るから、栄純って呼べよ!」

私が沢村くんに驚いてしまったこと、気付いていたのか。申し訳ない気持ちと共に、とてつもない熱が込み上げてきた。さっきのセリフ、物凄く都合の良いように勘違いしてしまいそうな内容じゃなかったかな?!

「‥‥‥栄純くん」

ぽつりと誰にも聞こえないような小さな声でそう言ってみたけれど、顔に熱がこもるばかりで、たまったもんじゃない。視線はゆるゆると下を向いてしまうし、沢村くんの方が見れなくなってしまう。
ごめんね沢村くん、私にはちょっと早すぎるようだよ‥!


その後、様子を見に来たらしい知り合いが来て、成功の報告をしたり世間話をしながら、その日は最後まで練習を見て帰った。途中から沢村くんの調子がおかしかったような、元気が空回りしていたような気がしたけど、大丈夫かな。‥‥おにぎりのせいだったらどうしよう。
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