気だけが何故だかべらぼうに焦って、早く学校へ着いてしまった。急いだところで沢村くんはきっと朝練中だ。今日も頑張ってるのかな、無理してないといいな、なんて。わからないけれど、きっと沢村くんが頑張っているのに自分は何もしていないような気がして、嫌だったのかもしれない。


「‥‥おっす!苗字!」
「沢村くん!おはよう」

しばらくして、沢村くんは元気よく私に挨拶をしてくれた。
席が隣になってからというものの、私と沢村くんはこんな風によくたわいもない会話を交わしている。その話題は部活のことだとか、忘れていたらしい抜き打ちテストのことだとか、はたまた今朝食べた食事のことだとか、様々だ。

「今日も朝から部活かな?いつも大変そうだね、お疲れさま」
「おう!だがこれしきのことでへこたれてらんねーぜ!」

そうして部活の、野球部での話をし始めた沢村くんに、私は必死に耳を傾けた。前まではただ単に面白いクラスメイトの一人として接していたから、忘れっぽい私は沢村くんの話すことの半分くらいしか覚えきれていないのだ。
よく名前があがる別のクラスの春っちくん、降谷くんの名前は、さすがに覚えたけれど。

「ハッ‥?!もしや、今日は小テストの日だったのでは‥!?!!?」
「あっ‥よく思い出したね沢村くん‥!そういえば今日二限目にあるね‥?!」
「ぬおおおお!俺としたことが‥!!沢村栄純一生の不覚!」
「ま、まだ間に合うよ今回の範囲狭いから!」

沢村くんを宥めたり慰めたり勉強を教えてあげるのに必死で、私は挨拶と一緒に見えた沢村くんの違和感もすっぽり頭から抜けてしまっていたのだった。
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