朝。いつもより遅くなってしまったな、なんて思いながら登校したにも関わらず、沢村くんはいなかった。席にも荷物を置いたような形跡はない。朝練が長引いてるのかな。
教室に先生が入ってきて少ししてから、チャイムが鳴った。沢村くん大丈夫かな。心配しながらの出席確認が終わろうかとしている時に、沢村くんの大きな声が廊下から響き渡った。
「遅れて申し訳ございやせん!!!」
扉を豪快に開け頭を下げる沢村くんのあまりの潔さに、少し笑ってしまう。沢村くんのああいう人には真似出来ないくらいまっすぐなところ、本当にかっこいいと思う。
「不肖沢村栄純、どんな罰でも受ける覚悟です!!!」
そう先生に詰め寄るも席に座るよう軽くあしらわれていたのを見て、今度は可愛いなと笑った。沢村くん、ちょっと落ち込んでる。沢村くんを見るたびに、新たな一面知るたびに、前よりもっとずっと好きになっていってる気がする。この恋が実ろうが実らまいが、私は沢村くんという人を好きになれて本当に幸せ者だ。1人で勝手に穏やかな気持ちになっていると、席に戻ってきた沢村くんと目が合う。
「っ!」
「えっ」
ーー目が合った瞬間、ものすごい勢いで目を逸らされた。
「さ、沢村くん‥‥?」
先生にばれないように控えめに声をかけるも、返事はない。
‥目の前が真っ白になりそうだった。前向きになれる理由を探してみようとするけれど、私の性格じゃあそう簡単に見つかりそうもない。前に落ち込んだ時の比でないくらいに気分が重く苦しくなっていく。
本当はあの時から、沢村くんはやっぱり迷惑だったんじゃないかな。沢村くんは優しいから、そう見えないように必死に取り繕ってくれてたんじゃないかな。私はバカだから、そんな沢村くんの優しさにも気づかないで、むざむざと自分のいいように信じ込んで。バカみたい。みたいじゃなくて、ほんとにバカだ。ぐるぐると考え続けて気付いたら家のベッドに居て、どうやって一日過ごしたか、あまり覚えていない。
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