あれから何日休んだのか分からない。
目がさめて天井とにらめっこするたび嫌になる。ご飯を食べている時や、テレビを見ている時。楽しいことを考えている時はすこぶる調子が良い。けれど、学校に行かなきゃ。そう考えると沢村くんのことを思い出してしまい、何度も熱をぶり返していた。原因はストレスだ。分かっている。私が、これ以上傷つくのが嫌なだけなのだから。
「‥‥‥苗字‥寝てるのか?」
視界がぼやけて、なんだか頭がぼうっとする。幸せな夢を見ていたような気がする。沢村くんが、野球をしていて。それを私がかっこいいと褒めると、沢村くんが嬉しそうにこちらを向くような、単純な夢。
「苗字‥‥」
沢村くんが私を呼んでいる。
顔は笑っているのに、声が哀しそうだ。大丈夫かな、何か具合悪かったりするのかな。沢村くん、私、沢村くんの邪魔になってないかな。
「沢村くん‥‥‥」
「! 苗字、目ぇ覚めたのか?大丈夫か?なんか飲むか?」
目を開けた時に見えた沢村くんは、笑ってなんていなかった。
すごく、すごく心配そうな顔をしていて、自分が情けなくなった。
「ごめんね沢村くん‥‥私、沢村くんの邪魔になってるよね‥」
「?!なんでだ?どういう事だ?!」
「沢村くんこの前から、私のこと避けてたから‥」
「!」
「沢村くんは‥‥私のこと嫌いなのかなって」
「きらい、って‥‥‥」
「そしたら、いろいろ考えすぎちゃって、なんか熱も出てくるし‥‥」
「‥‥‥苗字」
沢村くんは少し悩んだあと、決心したように唾を飲み込んだ。
「俺は、苗字のこと好きだぞ」
目を開けてからは随分と私の都合のいいことばかり起こった。沢村くんが私に好きだと言っている。そんな夢みたいなことあるはずないのに。あれ、これ夢か。そっか、夢だからいいのか。夢なら覚めて欲しくないなあ、どんどんまぶたが重くなってきて夢の中なのにさらにまた眠ってしまいそうだ。夢の中で寝たらその最初に見た夢に戻ってこれるのかな。
「‥‥苗字?」
沢村くんの声が遠くなっていって、視界も小さく狭くなっていって。思考回路がゆるやかに停止していくのを感じながら、私はゆっくりと目を閉じた。それと同時に、私の手が沢村くんの手に包まれたような気がした。
沢村くんは手をぎゅっと握りしめて、「また学校で会おうな」って、優しい声で言うんだ。なんてずるい夢だろうか。
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