「はい」
「遅い!!俺からの電話はワンコールで出ろって言ってるじゃん!」

名前を名乗る間も無く間髪入れず矢継ぎ早にキャンキャンとうるさい子犬に、思わずため息をついた。一瞬切ってやろうかと思ったけれど、後々面倒なことになるのは分かりきっていたので会話を続けることにする。

「なんだ鳴か……何の用…?」
「なんだとは何さ!カレシからの電話だよ?もっと喜んだっていいでしょー!」

嬉しいよ。そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。嬉しいけど、それ以上に文句がたくさんあった。鳴の電話で一喜一憂してるのが、私の一方通行みたいですごく嫌だった。

「だっていっつも突然かけてきては忙しいとか言うとキレるじゃん。そっちは好きな時にかけてきてるからいいかもしれないけどさ」
「は?何それ」
「私は鳴の暇潰しの道具じゃないから」

前回仕事中にかけてこられてそれはもう地獄のように困ったのだ。睨んでくる上司に必死に頭を下げながら電話を切ったら、満足してない鳴が何回もかけ直してきて。
あの時ばかりは別れようかと思った。その場の勢いに身を任せるのはよくないことだと彼で痛いほど分かっているので、踏みとどまったけど。

「彼女の声が聴きたいからって電話かけちゃいけないわけ?」
「……え」
「ほんっとなまえってばデリカシーない!俺もよくなまえなんかと付き合ってあげてるよね!もっと優しくしても罰当たんないよ?!」
「…………や、待って、え?え?」

突然の言葉に混乱するしかできないでいると、鳴はまだ言い足りないことがあるのか、「大体、」と言葉を続けた。

「寂しいとか一言も言わないし電話もしてこないし付き合ってるのに俺ばっか好きみたいじゃんバカ!バーカバーーーーカ!」
「は?!な、なにそれそんなの、」
「あーもううるさい!切る!!じゃあね!」
「ちょっと鳴!逃げないでよ!」

ぶつりと音を立てて切れた携帯を呆然と見つめていると、鳴からメッセージが来ていた。
確認すれば「今すぐかけ直してこなきゃ拗ねる」なんて書いてあるものだから、思わず笑い出してしまいながら、通話ボタンを押したのだった。
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