「春っち!」
「‥‥どうしたの、なまえちゃん」
なまえちゃんは栄純くんに誘われて野球部の練習や試合を観に来るようになった。それがきっかけで知り合って今に至るのだけど、きっかけが栄純くんだからなのか、彼女は僕のことを栄純くんと同じように「春っち」と呼ぶ。
決して嫌なわけではない。嫌なわけではないのだけれど、この、納得したくないモヤモヤ感はなんなのだろうか。
「栄純に聞いたんだけど、今度試合あるんだよね?」
「‥うん、あるよ。来る?」
「行く!行きたいです春っち様!」
「春っち様って‥‥」
ビシッと手を上げて挙手をするようなポーズのなまえちゃんに、思わず苦笑する。栄純くんと似て、少し、いや大分抜けてるところがある。だから余計に気が合うのだろうけど。
「そうだ、それで、昼休みに栄純と中庭でご飯食べようって話してたんだ!春っちもどう!」
「どう、って‥‥」
食べるけど。その言い方だと、僕が二人のお邪魔をするみたいじゃないか。そう思って黙っていると、なまえちゃんは駄目かと残念そうに訊いてくる。仕方ないなといいよと頷こうとしていたら、小さく栄純も楽しみにしてたのに‥とこぼしたのを聞いてしまって、気付いた時には腕を掴んでいた。
「は、春っち‥‥?」
「なまえは、誰の彼女かな」
「えっ‥は、春っちの、です!」
「ちゃんと名前で呼んで」
「春市くんのです!!!」
少し躾をしている気分になってしまったけれど、彼女はこのくらいがちょうどいいのかもしれない。
「これからもそう呼ばないと、次からは返事しないから」
無駄に大声で返事をした彼女を褒めてやるような気持ちで、頭に手をやった。ALICE+