「…はい、苗字で……」
「なまえ!!!」
表示されている非通知の文字におそるおそる応答してみると、思わず耳を遠ざけてしまうほどの大きな声が耳を劈いた。
「え、栄純?」
「おう!」
公衆電話からだったのかと安心すると同時に、元気いっぱいのその声に自然と心が綻ぶのを感じていると、栄純が無駄に大声で元気かと訊いてきた。
「栄純のおかげで元気になったよ」
「? 俺の?」
「ずっと栄純の声聴きたかったから」
そう言うや否や途端に黙り込む栄純に、知らず知らずのうちに何か変なことを言ったかと不安になったけれど、
栄純は先程までの元気な声がまるで嘘かのようにあのな、と小さな声で呟くものだから、声を聞き取ることに必死になった。
「…………俺も」
「俺も?」
「…俺も、なまえの声ずっと聴きたかった」
小さく漏らした本音に声を発する間も与えてくれず、栄純はわざとらしく大きな声で笑いながら、「だから特に用はねえんだ!じゃあな!!」と言って電話を切ってしまった。
「……それならもう少し話しててくれてよかったのに」
外にいるであろう栄純も見上げているだろうか、なんて。東京にしてはやけに綺麗な星空を見上げながら、そう思った。ALICE+