「「…あ」」

私が澤村の誕生日を知ったのは冬休みに入る少し前だった。クラスでなぜか誕生日の話になって、みんなそれぞれ言い出す中、澤村の時にだけ私はさらに神経を尖らせた。大晦日だよ、31日。そう言った澤村はその後、だから中々祝ってもらえないんだよなあと自虐的に笑っていたのを覚えている。澤村のことが好きだと自覚した直後に起こったその出来事は私にとってちょっと衝撃的で、誕生日に会って祝えないのかと落胆したのもこれまた覚えている。ライン?電話?それともメール?手段は浮かぶもどれをとったら澤村の記憶に少しでも残れるのだろうか。しかしながら今年いきなり祝ったら勘づかれるのではないか、なんて。悩みに悩んだ結果、私はさっき一番メジャーなラインという方法をとったのである。既読の文字はすぐについて、『ありがとな』と返ってきたメッセージに、喜びと少しの後悔を感じていた、矢先だった。

「偶然だな」
「、そうだね」

不自然に歪んだであろう私の顔に気付くことなく、澤村は新商品とポップが立った炭酸飲料を手にとった。たまたま駅の帰り道に寄ったコンビニで意中の人と会うなんて運命なんじゃなかろうか。しかも誕生日に。どんだけ乙女だよ、と内心で自分にツッコむけれど少しはそれを信じても罰は当たらないと思う。

「あの、澤村」
「ん?」
「…お誕生日おめでとう」
「お、ありがとう」

照れくさそうに笑う澤村に胸が鳴って思わず普段信じてもいない神様に感謝。

「何もなくてごめん」
「その言葉だけで十分だよ。それに今日直接誰かに祝ってもらえるとは思ってなかったから嬉しいし。あ、さっきもラインありがとな。まさか鈴木に覚えてもらってるとは思わなかった」
「覚えてたよ。忘れられるわけないもん」

他の誰でもない澤村の誕生日だから。とは言えるはずもなく。「大晦日なんてインパクト強すぎだしね」と笑う。

「まあ、そうか。けど本当に嬉しかったよ」
「…何回言うのそれ」
「俺の気持ちが伝わるまで?」
「伝わってるよ。そこまで感謝されると私も嬉しい」

本当だよ、澤村。みんなに、じゃなく私にだけ向けられた感謝の言葉はもしかしたら澤村以上に嬉しいんだよ。

「今日、澤村に会えてよかった」
「え、」
「直接言いたかったから」

自然にほろり零れた言葉に澤村は数回瞬きをして、それから顔をふいと背けた。
え、あれ、私今何を、

「え、あ、ごめん!あ、会えてよかったのも言いたかったのも本当なんだけど、その、」
「…この間」
「え?」
「聞きそびれたから教えてほしいんだけど」
「何を、」
「鈴木の誕生日」

こっちに再度向けられた澤村の顔は、赤くて。それでも合わせられることのない視線がそれをさらに引き立てる。伝染したゆでダコのような顔で自分の誕生日を告げれば彼は「わかった。今度は俺が祝うから」待ってて、そう言って笑った。
ああ、神様。来年が来る前に私、運を使い果たしそうです。



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HAPPYBIRTHDAY!
Daichi Sawamura
31/12/2016