放課後。先生に頼まれた用事を済ませ教室に戻ると机に突っ伏す日向くんを見つけた。
顔は見えないけどどうやら寝ているらしく、規則正しく肩が上下する。
日向くんて確かバレー部だったよね…?今日は部活ないのかな…そう思ったところではっとする。そうだ。今テスト前週間だから部活ないんだ。でもなんでこんなところで寝てるんだろう…
「…日向くん?」
おそるおそる呼ぶが返事はない。相当深く眠りに落ちているらしい。
え、と、どうしよう。でも疲れてるのかもしれないし、もうちょっと待ってみようかな…
ただ、今の季節このままでは風邪を引いてしまうかもしれない。わたしは首に巻いていたマフラーを日向くんの肩に掛けた。あまり意味がないかもしれないが、たぶんないよりマシだろう。そう思いながら前の席のイスに腰かけた。
日向くんとは一回だけ席が隣になった。入学してから最初の席替えで、仲良くなった友達と離れてしまってまごまごしてるわたしに「隣よろしく!鈴木!」と笑ってくれた。
『あ、う、ん!よろしくね。えと、日向くん』
『それにしてもラッキーだなおれたち!』
『ラッキー?』
『だってここ窓際じゃん!寝てもばれなそう!』
あ、けどいつも寝てるってわけじゃないからな!?日向くんは慌ててそう付け加えた。
それが初めての会話で、ふわふわと揺れるオレンジ色の髪の毛と、にっと笑った顔が太陽みたいだと思った。
たぶんそのときから、わたしは、
「日向くん、こんなとこで寝てたら風邪引いちゃうよ。」
30分くらい経ったと思う。一向に起きる気配のない日向くんにもう一度呼び掛けてみる。
「日向くん」
二度め。少し体を揺すってみる。だめだ。今日の朝までは練習してよかったから、そこでの疲れが出てるのかな。でもバレーしてるときの日向くんは疲れなんて気にしてないんだろうな。
わたしは日向くんのバレーをしてる姿を見たことはないけど、きっときらきらして、かっこよくて、太陽みたいで、名前そのものが体を表すように、
「…、翔陽くん、」
「…っ」
ぴく、と彼の肩が揺れる。
え、え、え…!
あれ、わたし今何を…
ちょっと待ってまさか今の聞かれ、
思わずガタッとイスを鳴らして立つ。
その音と同時に顔を上げた日向くんは、真っ赤、で。
何が起こったのかまだよくわかっていないわたしの顔を見てさらに赤を深めると、
「あ、えっ、と、ご、ごめん…!」
そう言って日向くんは教室を走って出ていった。
「………聞、かれた」
たった1度だけ、
(キミの名を紡ぐ)
(赤くて熱い顔を残して)