じいいい、っと効果音が付きそうなくらいわたしは今睨まれている。そしてそれはもう毎日恒例のようなもので、その目線がある方を見ればそこにはいつも影山くんがいるんだ。
また今日も。突き刺さるようなそれを背中に受け、汗が止まらなくなる。


「……花何かやったんじゃないの?」
「な、なんにもしてないよ…!」
「だって影山今日も睨んでるよ」


友達のさわちゃんがそう、こそりとわたしに耳打ちする。
わたしと影山くんはただのクラスメイトで、部活が同じだとか委員会が同じだとかそういった共通点はひとつもない。話すらろくにしない相手だし、わたしが影山くんのことで知っているのは彼がバレー部だってことくらいだったりする。席が隣になったこともないし、何かを一緒にやったという記憶もない。だから視線を受ける理由が本当に全くわからないのだ。なのに毎日毎日受ける視線はなんなんだろう。
睨まれるようになったのは数週間前からで、その周辺の出来事を探っても影山くんの反感を買うような出来事はない、はず、だと思う。だけど本人に面と向かって聞くような度胸はわたしにはなくて、この頃はもう半分諦めかけている。

そんな時だった。


「え、えっと、影山くん?」
「…………」
「あ、あの…」


この状況はなんなのでしょうか。なんの宿命か偶然被った日直の仕事を気まずさ全開の中でどうにか終わらせ、「じゃあ、わたし帰るね」と去ろうとしたら、なぜか影山くんに腕を掴まれてしまいました。ど、どうしよう。怖すぎるよ影山くん…!


「あの、」
「うわっはい!」
「……鈴木さん」
「は、はい…?」


次に出てくる言葉が全く予想できなくて困惑と恐怖の中、影山くんを見る。真っ直ぐな目が一旦逸らされて、また戻ってくる。ここで「前から気に入らなかった」とか言われたら即座に謝ろう。うん。大丈夫。影山くんだって謝ってる人に対してさらに怒ることはしないはず。わからないけど、たぶん。
影山くんの口が開く。
わたしもごめんなさいの準備をする。


「…俺、鈴木さんのこと好き、です」


は、と思わず声が漏れた。真っ直ぐわたしの目を見て紡がれた言葉は、即座に反応するのに適さないそれだった。
影山くんは今何を言ったの。好きって、わたしを?だって影山くんはわたしに不快な印象を持っていたんじゃないの。だから睨んでたんじゃないの。
もしかして、わたしは、睨まれていたわけじゃなくて、ただ目で追われていた?影山くんの好きな人がわたしだから……?
ぼっ、と顔に火がつく。今まで噛み砕くのに一生懸命で気付かなかったけど、目の前の影山くんの顔は赤い。
ちょっと、待って。いろいろ待って。


「だっ、え、と、わたし、そ、の、」


掴まれた手がすごく熱くて、顔も熱くて、全身が火照る。
告白なんて受けたことないし、しかも影山くんにだなんてますますどうしたらいいかわからない。


「…こないだ、」


うわあうわあとパニックになっていると再び開かれる影山くんの口。どくり、心臓の音とともに彼を見る。


「朝、一人で練習してんの見かけて、それから目が離せなくなった。俺もよくわからない、けど、なんつーか、細くて小せーのにそれに負けない気力みたいなのがあって、驚いた、し、その、」


真っ直ぐな言葉と、


「…好きだと思った」


人を射抜く目がわたしを捕らえる。
また一際大きく心臓がどくりと鳴って、息が詰まりそうになった。
わたし影山くんのことよく知らないから、と動かそうとする口は最初の文字でさえも発音することができなくて、醜く歪んでしまう。


「か、げやまく」
「返事はまだいらないから」


じゃあ、部活行ってきます。
となぜか敬語でそう言うと影山くんは教室を出ていった。
わたしはそれに返事をすることすらできなくて、影山くんをただ見送った後、うるさい心臓の音とともにしゃがみこんだ。
手が熱い、体が熱い、心臓が熱い、顔が、熱い。
ああ、どうしよう。
明日から目が離せないのはわたしの方だ。