※花巻とちょっとアホな後輩マネの話
「あ、花巻さん!」
本屋で偶然見知った顔を見つけ駆け寄った。花巻貴大さん。男子バレー部の先輩だ。私が声をかけると、雑誌コーナーにいた花巻さんはそれを片手に持って軽く手をあげた。
「おー鈴木ちゃん、本なんて珍しいね」
「ふふふ、作戦決行中です」
驚いたように言う花巻さんに向けて得意気に人指し指を立てれば「またろくでもないことか」と今度は嫌な顔。
「またって何ですか、失礼な。同じ本を取ろうとして手と手が触れあう運命の出会いを期待して来たんですよ。こうやって、」
そう一冊の本に手を伸ばす。どや、と花巻さんを見れば、彼はあまり興味がなさそうに口を開いた。
「鈴木ちゃんそんなん読むの」
言われてタイトルを確認。
おお、中々難しそうな参考書。
「読みません」
「アホか」
「アホってなんですか!」
「漫画でいいんじゃねーの。好きじゃん漫画」
「ちっちっち。いいですか花巻さん。もし私の欲しい漫画がそこに一冊しかなかった場合、私はどうしてもその時にそれが欲しくなります。もう運命の出会いどころじゃないです。くそくらえ状態です。でも!本だったら我慢できるし、本を譲った優しい女の子にもなれるんですよ!」
どうですか!と持論を展開するも、花巻さんはバレー雑誌をぺらぺらと捲っていた。
「ちょっ!聞いてますか花巻さん!」
「聞いてる聞いてる」
「…花巻さんから聞いたのに興味ないでしょ」
「そんなことねーよ」
その返答に、いいですよ別にと拗ねていると花巻さんはおもむろに口を開いた。
「俺だったらその一冊譲るけど、」
「え?」
そう言ってぱたりと雑誌を閉じた花巻さんは私を見てにやり。
そしてさっきの難しそうな参考書に私の手を持っていって、そこに自分の手を重ねた。
「その運命の出会いの相手、俺でもいいの?」
あなたとわたしの運命論
「な、なななな!!」
「顔真っ赤だな」
そう笑う彼からもう目が離せない。