※二口と茂庭とモブ女子
うちの生意気問題児はかなりモテる。まあ、顔はいいしバレーセンスもあるし、身長もあるし…って自分と比較してなんだか虚しくなってきたけど、そんな高スペックの持ち主がモテないわけがない。男の俺でさえ、伊達工バレー部問題児の一人、二口堅治のモテる要因が何個も出てくるんだから女子にはさらに違う魅力が見えてるのだろう。
けれど今まで二口が告白をOKしたという話は聞いたことがない。何人もの女子が玉砕した理由。俺はそれを知っている。
「「「っした!!!」」」
練習が終わり、ぞろぞろとみんなが体育館を後にする中、二口に話しかける女の子。伊達工バレー部マネージャーの一人鈴木花。言い争っている様子しか見ないこの二人は付き合ってる、らしい。本人たちに聞いていないから真相はわからないが、たぶん本当にそうなんだと思う。これこそが二口が告白を受けない理由。二人をしばらく見ていると通常運転と言うべきか、今日もまた不穏な空気が流れていた。
「はいはいわかりましたー」
「ちょ、二口!ちゃんとわかってる!?」
「わかってるっつーの、鈴木うるさい」
「なっ…!本当腹立つ!!」
これが俗に言うケンカップル?喧嘩するほど仲がいいってやつなのか?まあ何にせよ、と二人の間に割って入る。
「二口、ちょっといいか」
「あ、はい。じゃーなブス」
「はあ!?」
笑ってひらひらと手を振る二口に小さくため息をつく。
「何すか茂庭さん」
「いーや、なんでもないよ」
二口を連れ出したはいいけど今早急に話すことはなく。他愛もない話をしながら部室棟へ向かっていると、
「あの、二口くん!!」
後ろから聞こえた声。反射的に俺も振り返ればそこには見たことない女子の姿があった。二口のクラスのやつだろうか。ロングの髪をふわりと巻いている彼女は中々に可愛い子だ。少し俯き気味に唇を噛むその子を見て第六感が働く。
「じゃ、じゃあ俺先行ってるから」
「いや、茂庭さんいいっすよいて」
「は!?」
何を言い出すんだこいつは!
目を見開いて二口を見ればしれっとした顔で「で、何?」と問いかけた。
「その、二口くんて付き合ってる人いるの…?」
ちらりと俺を一瞥した彼女は小さく言葉を紡いだ。
なんで俺こんなとこにいるんだろう。後輩が告白される現場に居合わせる先輩とか意味わからないよな、本当ごめん。タイミングを逃した。
「あー…」
二口はその問いに間を開けた後、ふっと笑って
「いるよ。付き合ってる可愛い彼女」
そう言った。
その顔が今までに見たことないくらい優しくて、思わず充てられそうになってしまう。元がいいやつのこの顔はあかんだろ。女の子はそんな二口の言葉にそうなんだ、と悲しげな笑みを浮かべた後、お礼を言って去っていった。
「……お前なあ。そーいうの、本人に言ってやれよ」
「いやですよ絶対、死んでも」
「喜ぶと思うけどなあ」
そう言って鈴木を思い浮かべる。二口といるときは対外喧嘩をしているけれど、あいつだって女子だ。あんな表情であんなことを言われたら嬉しいと思う。きっと。
「つーか茂庭さん気づいてたんすね」
「へ?」
「俺と鈴木が付き合ってるって。今だって反応薄かったし」
「…あーまあな。先輩の勘てやつ?」
「茂庭さん勘とか働くんすね」
「はあ!?」
けたけたと笑った二口は俺の方を向いて挑発的に口に弧を描いた。
「あげませんからね、先輩」
全くこの生意気後輩が…!
歩きだした二口の背中に向かって、いらねーよ!と声を張ると返事の代わりか、二口は手を軽くあげた。