「あっつー!」




チリンチリン
真上には青い青い空



「これぞ夏ーって感じやな」




チリンチリン
前には君の大きな背中と



「シゲー暑いー」




太陽の光を浴びてきらきら揺れる髪




「いや、それ俺に言うてもしゃーないから」




風をきりながら二人を乗せた自転車は走ります





「なんか青春ぽいよねーこの感じ」
「あー確かになー。歌の歌詞にありそうやな」
「でもシゲに青春て似合わないか」
「何言うてんねん!シゲちゃん言うたらイコール青春やろ!」
「えー」


白いTシャツと金色の髪が風になびく。
普通の人なら青い空と白い雲に黒い髪なのだけれど、シゲの場合その色の中にそれはそれは綺麗な金色を添えるんだ。


「それよか、どこ行くん?このままただぼけーっと自転車乗り回してるだけじゃなんもおもろないで」
「じゃあさ、坂道下ろうよ」
「は?」
「青春ぽいじゃん」
「まあ、確かにな」
「シゲと青春したい!」
「しゃーないなあ」


シゲがそうため息をついたかと思うと、自転車がぐんとスピードを上げた。
さっきまで緩かった風が強いものに変わる。
私は慌ててシゲの背中にしがみついた。
…あ、


「シゲの匂いがする」
「うわ!急に何言いだすん!もしかしてあれか、匂いフェチか!」
「違うよ!」


私がそう言いながら軽く背中を叩くと
わかってるって、ジョークやんジョーク。
そんなことを言いながらシゲがからからと笑う。
その直後、シゲの体がぴたりと止まった。


「え、何、どうしたの」
「来たで来たで!しっかり掴まっとき!」
「ちょっ!まだ心の準備が…!」
「待ったなし!」
「ぎゃー!!」


私がそう叫んでいる間にも自転車のスピードは上がり続ける。

これはやばい。
やばいやばい!やばいって!


「シゲー!ブ、ブレーキは!?」
「目一杯かけとんでー」
「あんたなんでそんなに平然としてんのよ!」
「なあ!花!」
「何ー!?」






「好きやー!!」





ごおーっとすさまじい風の音の中、シゲの声がやけにすっきりと私の耳に届いた。


「はあ!?な、何言ってんのいきなり!」
「青春、やろ?」


背中越しにシゲの爽やかな笑顔を見た気がした。
それは最上級の、










青春ごっこ
(それは終わりのない)