「ねー英士」
「何」
「英士は辛いものは好き?」
私の質問に嫌いじゃないよ、と返した彼の目線は雑誌に向けられたままだった。
嫌いじゃないよって。
それはどうなの、好きってこと?
「じゃあキムチも好き?」
「まあ」
そんなの知ってる。
だって郭家の食卓のほとんどにキムチが出るもの。
「ユンとか結人とか一馬とかチームメイトのことは?」
「いきなりなんでそんなこと聞くの」
お。
やっとこっち向いた。
部屋の真ん中に置かれた白いテーブル越しに視線がぶつかる。
そんな質問もするだけ野暮だって知ってる。
「べつに…」
「まあいいけどね。花が突然変な質問するのは今に始まったことじゃないし」
コト、と音を立てカップが置かれる。
そして目線はまた雑誌。
馬鹿英士!
いいよいいよ、本番はここからだもん!
「じゃあ読書は好き?」
「はいはい」
「じゃあ天気予報も?」
「それって好きなことっていうより得意なことでしょ」
「でも好きじゃなきゃやらないでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ次!私のことは?」
なるべく流れに逆らわないように言葉を紡ぐ。
英士はゆっくりと視線を上げ私を一瞥し、それからふっと笑った。
「大好きだよ」
好きって言ってよ!
(…!あ、え、と)
(何、花が聞いたんでしょ)
(そ、うだけど!いやまさかそう返ってくるとは…)
(最初からそれを聞くつもりでいたのもバレバレだよ)
(!)