「ねー多紀」
「ん?」


名前を呼ばれ振り返ると同時、生暖かい風が花の髪を撫でた。
さらさらと流れるような黒髪をすくい、彼女は口元を緩ませる。




「私、死のうかな」



一瞬にして声が遠ざかる。
ノイズが混じる。
まるで霞硝子のように視界も遮られた。


「そしたら多紀どうする?」


相変わらずの微笑みを浮かべ愉快そうに花が問う。
意図が掴めない。
けれど彼女は本気だ。


「後を追うかもしれない、な」
「そうなの?私は多紀が死んでも後追いはしないよ。……だけど」
「だけど?」


こんな話冗談じゃない。
普通じゃない。
それでもひどく興味をそそられた。






「可笑しくなって誰かを殺しちゃうかも」





そう言ってまた微笑んだ彼女の後ろには満開の桜が咲き乱れていた。










愛故に狂い咲く