「こんなところで寝てたら風邪引くよ?」
「あ、ヒロト」


暖かい日差しに誘われて、それに抵抗しないままタオルケットとともに転がっていると上から声がした。
冬には冷たくて足がつけられなかった縁側が、わたしのぬくぬくスポットに戻っていたのだからごろ寝してしまうのはしょうがないと思う。
そう言うと綺麗な赤毛の少年は、それでもまだ肌寒いから注意しなよ、とお母さんみたいなことを言った。(わたしはお母さんをあまり知らないけど、前に見たドラマで同じようなセリフを聞いたことがある)


「ヒロトもおいでよ、」


言いながら体を起こして隣をぽんぽんと叩く。

「もうすぐ夕飯の用意が始まるよ」
「ちょっとだけだもん。ね?」
「…5分だけだからね」
「わーい」

すとん、と腰を下ろした彼にタオルケットをお裾分けする。温もりが半分消えて違う温もりが灯る。その感覚がなんとなくくすぐったくてちょっと笑ってしまった。
それにヒロトが不思議そうな顔を向ける。そんな彼と目を合わせたらまた頬の筋肉が緩んだ。


「わたし、幸せ者だなって思うの。悲しかったり寂しかったりしたけど、それを話せる人がいて、迎え入れてくれる場所があって。」


そこで一度息を吸う。
言葉にするのってこんなにどきどきするんだ。
でも思いがあふれ出る。止まらない、止めたくない。
ヒロトに聴いてほしい。


「みんなにどれだけありがとうを言っても足りないくらい。ありがとうじゃ足りないくらい。でもね、わたしそれしか感謝の言葉を知らないから。だから、ありがとうヒロト」


恥ずかしかったけど、伝えたい思い全部を言葉にして紡いだ。そしたらやっぱりすごく恥ずかしくて、顔が上げられなかった。

ふいに、タオルケットの中で手が握られて、驚いてヒロトを見れば彼はとても優しく笑っていた。


「僕もたくさん感謝してる。父さんにも姉さんにも、円堂くん含めてイナズマジャパンのみんなにも。でもどんなときも側にいてくれたのは花だった。だから僕からもありがとう」


端正な顔がくしゃりと歪んで、なのに相変わらず綺麗だった。
夕日にヒロトの赤い髪が透けてお日さまが近くにいるみたいに感じた。


傍らで微笑んだ赤いお日さまはじゃあそろそろ時間だよ、とわたしの手を握ったまま立ち上がった。






陽にあたる、
(それはなんてあたたかい)