頭は支えてください



ふと、意識が浮上して辺りを見渡すと小さい手が目に入った。
そしてそれが自分の手だと気づいて、赤ん坊になっている事に驚いた。

待て待て待て。
私が今、赤ん坊だとしてここはどこ。

豪華絢爛とでもいうべきか、とても高価そうな物がいっぱいの部屋に置かれたベビーベッドに私1人。

1人!?両親は!?

あわあわとパニックになって泣きたくなって来たところで扉が開き、声が聞こえて来た。


「ボスの娘、ですかい?」
「そうだ。あの方から幹部で世話をしろとのご命令だ」


入ってきた人、怖っ!
え、もしかして、この人がパパン?
嘘でしょ、怖いよ、黒いよ、銀髪だよ!?
銀髪は関係ないか…


「チッ、起きたか…。おいウォッカ、ミルク作ってこい」
「へ、へぃ」


覗き込まれた2つの顔に見覚えがある。
その上ウォッカ…だと。
もしかしてお酒がコードネームのどこかの組織さんですか。

私の人生詰んだかもしれない。
だってあの黒の組織でしょ
殺される。泣いたら殺される気がする。

あれ、でもさっきボスの娘って言ってた?
誰が?私が?

ベビーベッドからチラリと様子を伺えばジンと目が合った。

ひぃいいい!怖いよーー!


「うぇ…」


赤ちゃんって感情がそのままダダ漏れなんですね。
怖いと思った感情が涙になった。


「おい、ウォッカ急げ」
「すいやせん」


ごめんね、ウォッカ、多分ミルクなんて作るの初めてだよね。
そして私が泣くのはお腹が空いたからじゃなくてジンの眼光が怖いからだよ。


「うぇえええ」


本格的に泣きが入った私にジンが舌打ちして、手を伸ばしてきた。

ころされる!!!!

ギュッと目を瞑ると、浮遊感。
え、抱き上げられた?
と思ったのもつかの間、首が後ろに落ちました。

ちょ、私、首すわってない!呼吸ができない!


「なんで頭が落ちるんだ」
「あ、兄貴!頭支えてくだせぇ!」


作りかけのミルクが入った哺乳瓶を片手にウォッカが慌ててこっちに来た。
ジンが言われた通りに頭を支えてくれたから、とりあえず呼吸が戻る。


「ひっく、うぇえええ」


もう訳が分からない。突然赤ん坊だし、目の前には黒の組織の2人がいるし。

舌打ちしたジンが私をベビーベッドに戻し、先程帰って来た時にソファに投げ置いていた育児書を読み始めた。

育児書!?

びっくりして泣くのもやめて、眺めていればなんとかミルクができたらしくウォッカが哺乳瓶を持って再びこちらにやって来た。


「飲みやすかね?」
「貸せ」


先程とは違いきちんと頭を支えて、横抱きにしてくれたジンに驚く。

もしかして学んだの、似合わな過ぎて幻かと思ったその育児書で学んだの?

そのまま哺乳瓶を咥えさせられたのでミルクは素直に飲んだ。


ーーーーーーーーーー


飲み終わると、縦向きに抱っこされ背中を叩かれる。

「けふっ」
「兄貴、それは?」
「ゲップをさせないと吐くらしい」

その後、ベビーベッドに戻され、育児書を読むジンとウォッカを眺めていたら、もしかして殺されないのでは?という淡い期待が出て来た。