その日、私は朝から珍しくグズっていた。
別に泣きたい訳じゃないんだけど、多分風邪だ。
頭はぼぅっとするし、鼻がつまって自然と涙が出る。
そんな私にいち早く気付いたのは新一くんで。
慌ててママンを必死に起こしているのはとても可愛いと思う。
「あら大変。熱も少し高そうね…。病院…あ!いっけない!今日優ちゃんサイン会だったっけ」
往診の先生に来てもらわなきゃ、とパタパタ動き始めたママンをぼぅっと見てると新一くんが居ない事に気付いた。
あれ?どこ行ったんだろ…。
「先生!早く来てよ!夏希が死んじゃう!」
え、待って、勝手に殺さないで。
新一くんの叫ぶ声にビックリしてると、流石ママン。声が聞こえてから駆け出すのは早かった。
「新ちゃん!!」
「今日、父さん居ないからジーちゃん先生に来てもらうんだろ!?」
「そうだけど…。あー!勝手に病院にかけたのね!」
居ないと思ったら病院に電話してたの。
新一くんの行動力すごいな。
ママンが電話を受け取ったのか、すみませんと謝りながら私の状態を説明する声が聞こえてきた。
その後ろの方から今度は何かを引きずる音とバタンとかドタドタと走る音が聞こえてくる。
「夏希!」
「ぁ゛ぃ」
戻ってきた新一くんの手には冷えピタ。
なるほど。さっきのは椅子を動かして冷蔵庫を開けた音だっのね。
「ちょっと冷たいけど我慢しろよ」
フィルムを一生懸命剥がして、丁寧に貼ってくれた。
最初の冷やっとする感覚には身構えたけど、貼ってしまえば冷たさが気持ちいい。
ありがとう新一くん、と思いながら顔を向けると、新一くんの背後に困ったような、怒ったようなママンが居た。
「看病はママがするから、新ちゃんは今日なっちゃんと離れてなさい!うつるでしょ?」
「やだね!」
「あ!こら!どこ行くの!」
また何か持って来てくれるつもりなのかな…。
言い争うママンと新一くんの声と物音をBGMに怠さに負けた私は眠りについた。
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2日後、全快した私と反対にしっかり風邪をもらっていた新一くんが熱に倒れた。
ごめんね、新一くん。でも看病ありがとう。
すごく嬉しかったよ。