君
――――――――――…
『ここどこ?』
確か僕は大広間にいて、組分けして、ダンブルドアの合図で食べ物が並んで…感動したまではバッチリ覚えてる。だけど、そこから先の記憶が全くって言っていいほどない。ちなみに、今僕がいるのは天蓋付きのベッドで、真紅を基調とした色合いだった。
シャッ!!と勢いよくカーテンが開かれる。
『ヒカリッ、いい加減起きろ……って、なんだ、もう起きてんじゃねェか。早く用意しろよ。朝食食べに行くぞ。』
?を思い切り頭に浮かべていた僕だったが次の瞬間に現れたツカサちゃんに驚いた。ぐきゅゅるるる〜とお腹が悲鳴をあげる。
『?…僕の夕食は?』
首を傾けながら彼女に訊ねれば、ツカサちゃんは呆れたようにため息をはいた。
『昨日、お前はトライフルを食べながら眠気に負けて眠っちまったんだよ。ったく、俺が皿をどかさなかったらカスタードと顔面衝突だったんだぜ?』
『マジ?』
『マジ。』
『………』
『………』
僕が思い切り息を吸い込むと、ツカサちゃんはさっと自分の耳を塞いだ。
『
うわぁぁん!!僕のトライフル食べ損ねたーーッッ!!』
僕が腹の底から声を出すと、バタバタバタという足音と共に僕の反対側のカーテンが開かれた。
「ツカサ!?今の声はヒカリよね。二人ともどうしたの?」
そこに現れたのは、緑の瞳に綺麗な赤髪の女の子。…たぶんツカサちゃんより、ちょっと背が小さいくらいだろうか。
『あぁ、リリー。悪いな。コイツが昨日の夕食でちょっと…』
彼女が申し訳なさそうに頭をかけば、リリーは、目をパチクリした後にクスリと微笑む。「大丈夫よ」と言いながら、座っている僕と視線が合うように体を屈ませてくれた。
「おはよう、ヒカリ。私は、リリー・エバンズよ。貴女に会えて嬉しいわ。貴女とツカサと私は同じ部屋なの。これからよろしくね。」
そう言うと、リリーはふわっと笑い、手を差し出した。僕はリリーの顔と手を交互に見た後に彼女と握手をする。時を見計らってツカサちゃんは口を開いた。
『ヒカリ、リリー、自己紹介はそこまでにしてそろそろ大広間いくぞ。続きのおしゃべりはそこでだ。特にヒカリ。お前腹減ってるんだろ?』
『そうだった!』
#つかさ#ちゃんの言葉に僕は一気に覚醒した。すぐにベッドからかけ降りる。
『悪いな、リリー。たぶん毎回こんな状態だから慣れてくれ。』
ツカサちゃんがそう言うと、リリーは「そこがまた可愛いわね。」 と笑う。
『あ、ヒカリ。そのまま授業行けるように荷物も持っていくぞ?』
『ん、了解。今日の授業って何だっけ。』
『あー、魔法薬学・闇の魔術に対する防衛術、昼食挟んで天文学だ。』
『了解了解。魔法薬学…闇の魔術に対する防衛術…天文学…』
ツカサちゃんが言ったことを復唱しながら、自分のリュックにアージニウス・ジガーの〔魔法調合法〕、クエンティン・トリンブルの〔闇の力・護身術入門〕、ニュート・スキャマンダーの〔幻の動物とその生息地〕、マカエリ・ジュナーの〔天文学入門〕などの教科書や、羊皮紙や羽ペンを入れていく。
「ヒカリのリュックは可愛いわね。でも、いくらなんでもそれだけ詰めればリュックが破けるわよ?」
リリーは苦笑しながら僕のリュックを指し示した。確かに、このリュックは小さい子用のように20a程度しかない。リュックの外側には天使の羽を模しているのか、魔法がかかったそれら二枚はヒラヒラと小さく羽ばたいていた。
『んーん、大丈夫。見てて。』
自分の荷物を全部入れ終えたけれど、全く一杯になる様子もなく、もちろん破けることもない。リリーは目丸くした。
『これね、拡張魔法がかかってるんだ。だから、いくら詰め込もうとも平気。ツカサちゃんのもだよ。』
「ツカサも?」
『あぁ、俺はこれに入れてる。』
リリーに首を傾げられ、黒くて小さなポーチを見せた。
「魔法製品って本当にすごいのね!一体どこで買ったの?」
リリーは瞳をキラキラとさせていた。
『いや…これさ、魔法製品じゃなくて、普通のマグルの製品に俺達が魔法をかけたんだよ。』
「え?」
『僕たち拡張魔法を自分たちでかけてみたんだ。それに付随して、ツカサちゃんは重量減少魔法、僕はそれとリュックの一部を鳥の羽に変える魔法をかけたんだよ。』
リリーは息を呑んで感心した。
「貴女たちってすごいのね!」
その言葉に俺達は苦笑する。
『ね、リリー、そのバッグ僕に貸して?今は時間なくて教えられないけど、魔法はかけられるからさ。リリーのも、僕たちのようにしてあげる。』
僕は、リリーからバッグを受け取ると拡張魔法と重量減少魔法を唱えた。
「ありがとう、ヒカリ。」
リリーが本当に嬉しそうにお礼を言うものだから、僕も嬉しくなった。
―――――…
僕たちグリフィンドール塔がある八階から一階の大広間までは結構な数の階段があった。大広間に着くと、結構な人の量で席が埋めつくされている。
「あ、おはよう、ツカサ、リリー、それにヒカリ。君達の席はちゃんと取ってるよ。」
ルーピンが僕たちを見ると、手招きして導いてくれた。そこにはすでにジェームズ、シリウス、ピーターがいる。
僕たちは挨拶を済ませると用意された席に座った。#ツカサ#ちゃん曰く、僕が寝てた昨日のうちに皆仲良くなったんだそうだ。
「ヒカリ、昨日は良く眠れたかい?」
ジェームズが、ニヤニヤしながら僕に聞いてきた。目の前にあるコーンフレークやベーコン、キッパーなどたくさんの食べ物に目を輝かせていた僕は、一気に現実に引き戻されて「え?」と首を傾げる。隣で座っていたツカサちゃんが、シリウスが寝ていたお前を女子寮前まで運んでくれたんだとこっそり教えてくれた。
僕はそれに納得すると、『そういえばね、寝心地がすっげ良かったよ!シリウス、僕を運んでくれてありがとう!!』と笑顔で答えた。
シリウスは、それを聞いて「ブッ!」とカボチャジュースを吐き出す。ジェームズは「汚いなー」と言いながらもニコニコとシリウスの反応を楽しんでいた。
ピーターはオロオロとそれを見ている。
『それよりさ、今日の授業が終わったらホグワーツ探険しない?僕達で、この学校を解明しようよ!』
(ナイスな考えだねヒカリ!僕はもちろん参加するよ。君も行くだろ?シリウス。)
(おぅ!もちろんだ!)
(僕は遠慮しとくよ、ちょっと用事があってね。)
(私も図書館行きたいからパスするわ。)
(ぼ、僕も図書館に。)
(えぇ!まだ授業も始まってないのに図書館かい!?)
(私、魔法界の本に興味があるのよ。じゃあピーター、一緒に行きましょ。ツカサ、ヒカリ、消灯時間前には戻ってきてね。)
((了解了解。))
放課後が楽しみになった瞬間だった。