ハローハロー
俺達の目の前に立っているのは変身術の教師であるマクゴナガル。無理矢理笑顔を作ろうとしているのだろうが、表情自体は引き攣っていてかなり悲惨な状態だった。



「Mr.アクタガワ、Mr.アトベ。一応聞きますが、これは何ですか?私は確かにこの羽を針に変えるよう指示をしたと記憶していますが。」



『えーと、先生知らないんですか?俺のはアレですよ。ニョッキー。ニョッニョッと動きながらなんとも可愛らしい効果音を出す某教育番組の人気キャラ。いやー、俺マジで実物見れるとは思わなかったわー。俺天才?』


俺の机の前にいるのは、ウニョウニョとしている緑色の芋虫。時折首を傾ける様はなんとも可愛らしい。―――あ、マクゴナガルの皴が一本増えた。



『ちなみに僕のは腹ぺこ青虫。お腹痛くなるくらいたくさんの食べ物食べちゃって、最終的には蝶々になる某絵本の主人公!』


ヒカリの机の前には、同じくウニョウニョしている青虫。だけど、よほど腹が減ってるのか机の端っこをボリボリ食べていた。


『お、ヒカリにしては中々良いチョイスしてんじゃねーか。俺もその絵本好きだったぜ。』


『でしょでしょ?コイツマジかわ――――』



「グリフィンドール十点減点!!」



ついにマクゴナガルの堪忍袋の緒が切れたのか、俺とヒカリに怒鳴り声を浴びせた。もちろん、そんな騒音に耐え兼ねた俺とヒカリは同時に耳を塞ぐ。周り(主にスリザリン)からクスクスと言う笑い声が聞こえた。クソ、今笑った奴覚えてろよ。ぜってー後でシバいてやる。



「貴方達はまともな術の一つもできないのですか!?罰として次の授業までにレポートを提出しなさい!」


『『えーーー…』』


「当然です!返事は!?」


『『へーい。』』


「返事はハイです!ハイ!アクタガワにアトベ、貴方達は私に何度言わせれば気が済むのですか!?」


『ティーチャー、そんなに皴寄せたら小皴が増えちゃうよ?』


『そーそー、美人な顔がもったいないぜ?せーんせ?』


俺はヒカリの言葉にウンウン頷きながら、机に飛び乗るとマクゴナガルの顎をすくって見つめた。俺の仕草に一気に静まる教室。ついでキャーと言う女の子の黄色い声が聞こえた。



「…………グリフィンドールからさらに二十点減点。Mr.アトベ!机から降りなさい。このようなことは前代未聞です。アトベ、早く降りなさい。」


目の前には般若の顔をしたマクゴナガル。どうやら俺の色気作戦は失敗した模様。つれねーな。チッと舌打ちすると渋々机から降りた。
丁度その時授業終了のチャイムが鳴り、俺とヒカリはマクゴナガルの制止の声から逃げるように教室を後にした。







えーと、まず設定にもあったように俺とヒカリは氷帝学園中等部に所属するごくごくふつーの女子中学生だった。"た"ってつくわけだから、もちろんこれは過去形であって。冒頭で察していただけたように、俺達は今ホグワーツ魔法学校にいる。さらにMr.と呼ばれたことからも分かるように、俺達は男装していた。


あー、ホグワーツと言えばアレだろ?とある本の中の学校。しかも"魔法"という、いわゆるファンタジーに含まれるストーリーが繰り広げられている世界だ。
常識的に考えて、俺達がそんな中にいるのはおかしいよな?だけどこれはいろいろ訳アリなんだ。


その訳を話すには少し時間を要するかもしんねーけど勘弁な。ここからは、俺とヒカリが順序良く説明する。

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