とある麦わらの約束
変テコな夢を見た。いつもの夢じゃねェ。肉しか出てこねェ夢じゃなかった。
沢山の子供と、一人の女。そいつらが一緒に生活をしていて、一人、一人と、胸ん所に赤い花を咲かせ、化け物に喰われていく。
そんな、すっげぇ嫌な夢だ。
ルフィ「お前ら、なんで」
早く逃げろよ、みんな喰われちまうぞと手に汗を握る。おれが子供達にそう叫んだ所で、誰も気づきやしなかった。こいつらの目の前であっかんべぇをしてみても、誰も怒りもしねぇ。ゴムゴムのぉぉぉと何度構えても、あの化け物たちには一切当たらなかった。
ルフィ「……すっげーな、あいつら。」
ついに、子供たちが箱庭から脱走した。
エマと言う赤い髪の女、そしてレイと言う黒髪の男を中心とした大冒険の始まりだった。
天真爛漫なエマ、本好き努力家レイ、そして、天才とみんなに呼ばれていた白髪の子供ノーマン……。良いなぁ、あいつら。おれ、あいつらが欲しい。
ルフィ「今度会えたら、絶対ェおれがお前たちを助けてやるから待ってろよ!そんでおれたちの仲間になれ!」
おれの透けた身体を、無遠慮に通り抜けていった赤髪達に対して、一方的な"約束"を交わした。
−−−−−…
サンジ「おぅら!野郎ども朝飯の時間だ!!良い加減起きろ!!」
サンジの蹴りで目が覚めた。頭を掻きながらキッチンへと向かうと、ナミが下から伺うように見上げてくる。
ナミ「アンタ一体どうしたの?ルフィ。いつもなら、朝飯ーっ!ってサンジ君が用意した食事を我先にがっつくっていうのに。」
ルフィ「−−−ん。なんでもね。」
そう言っていつも通りに、にししと笑って見せた。夢と、現実は違う。それは分かっているつもりだ。けれど、海は広い。冒険を続けていれば、もしかしたら夢の中のあいつらと会えるかも知れない。そんな気がした。
ルフィ「エマ、レイ、ノーマン…」
待ってろよ。お前らと会えたら、誰が何と言おうと、絶対ェ、おれの仲間になってもらう。
そいつらの名前を忘れないように、しっかりと頭の中に刻み込むと目の前の朝食をかっ込み始めた。
それから夢の中の赤髪の子供と似ている、けれど実はおれと同い年だった女−−−−−エマ、そしてその幼なじみだという黒髪の女と出会うまでそう時間はかからなかった。レイやノーマンにはまだ会えねェし、エマ達もそいつらのことは知らないと言う。けれど夢が現実になることもあるというなら、きっといつかは、そいつらとも出会えるはずだ。
エマ「−−−−ちょっとルフィ!いきなりどうしたの?」
丁度甲板で海を眺めていた赤髪をわしゃわしゃと掻き回す。鳥の巣には丁度良さそうな形に、思わず笑った。
ルフィ「今度は、お前にさわれるな!エマ!」
エマ「意味分かんないよ……何か変な物でも食べたの?チョッパーを呼んでこようか?」
訝しげな"自身の仲間"の言葉におれは嬉しくなる。でも、このことはおれだけが知ってれば良いことだ。
ルフィ「−−−なんでもねェよ」
今はただそれだけを、彼女に返した。
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