Lucky 7 *各方面お子様借りております。 【フリージア×フラーウムちゃん】 何で逃げるんだい、なんて笑いながら追い掛ける。追い掛けるからだと、と彼女は叫ぶ。会った瞬間に逃げられては堪ったものではない。自分から逃げるだなんて。彼女が誰に振り向いても嫉妬の炎で焼け死んでしまいそうなのに。 「つっかまえたあ」 壁際に追い込んで、両手首を壁に押し付ける。がん、彼女の後頭部が壁にぶつかる音がした。痛みに顔をしかめる、そんな些細なことで征服欲に満たされる。今、彼女の瞳に映っているのは、自分ひとり。 「フラーウム、ぼくは何度だってキミを掴まえるんだよお。何でそんなに逃げるんだい?」 「そっ、れは……っ!さっきから言ってるじゃないか!」 聞かないフリ。何度聞いたってそんな言葉は右から左だ。愛を返す日ならば、返してあげよう。どろどろに爛れて醜い愛の証を。 * * * 【オリーブ×イヴちゃん】 手持ち無沙汰で彼女の勤務地の前をうろうろと歩いてしまう。きっと義理だと分かっているものの、貰ったバレンタインのお返しはしないと気が済まないのだ。うろうろ、うろうろ。何分その場を行ったり来たりしているのだろうか。覚悟を決めて扉を開けようとすると、先手を打ったように扉が開いた。 「あ、い、いらっしゃいませ……です」 「あ、ああ……い、いらっしゃいました……」 思わず出た間抜けな返事に、イヴは思わず吹き出してしまう。オリーブも釣られて笑ってしまい、気付けば店前でふたり、大笑いしてしまった。 漸く笑い終わって店内へ入れば、今日の予定は本ではなかったことを思い出す。 「あの……イヴ、大したものじゃないが……受け取ってくれると嬉しい……」 コートの内ポケットから取り出したのは手作りの巾着袋だ。照れを隠すように俯けばその身長差で視線がぶつかる。どうやら照れているのはお互い様のようで、オリーブは内心浮かれてしまうのだった。 * * * 【インディゴ×歌奈ちゃん】 歌奈の手を引き、インディゴは城内を走っていた。急がないと間に合わない。逸る気持ちを抑えきれず、足は早く早くと叫んでいる。 「インディゴっ、何処に行くの!?」 「どうしても歌奈に見せたい場所があるんだ!」 普段は出さない大声で返し、階段を駆け上がる。もともとそこまで足は早くないが、火事場の馬鹿力とは恐ろしいものだ。普段では出ないであろうスピードで景色が飛んでいく。 5分は走っただろうか。やっと足を止めたインディゴがくるりと振り返る。城の最上階、小さな見張り台の天辺。歌奈は息を整えながらインディゴを見ようと顔をあげる。その時だった。 地平線に漏れ出る明るい光。世界を満たす、美しい日の出。 「ホワイトデーだからね、おれのお気に入りの景色を歌奈に見せたかったんだ」 へらりと笑って、日の出に惚ける歌奈の額へキスを落とす。その表情は悪戯っ子のように輝いていた。 * * * 【ヴィオレ×みずきちゃん】 本を読んでいると背後からにゅうっと手が伸びて来て目隠しをされる。誰だ、なんて可愛らしい問い掛けが耳元に聞こえたので本を閉じてその手を掴み軽く引っ張った。 「やあみずき。今日も可愛いね」 「ヴィーさん痛いってー!」 バランスを崩してヴィオレの膝に転がり落ちたみずきは、ぷくりと頬を膨らませた。それが冗談であることを知っているから、ヴィオレはそんな彼女の紙を撫でて楽しそうに笑う。 「ああ、そう言えば今日はホワイトデーだったね。プレゼントはないから、これで許してくれるかい?」 返事を聞く前に奪うのは、唇。一瞬見開かれた瞳に映る自分の顔は満足そうに笑っていた。 * * * 【ガデュー×ジャスミンさん】 物を貰って舞い上がったのは何時ぶりだったろうか。傭兵として分を弁えているつもりだったが、思いの外彼女からの贈り物は嬉しかったようで。暫く気持ちが落ち着かずそわそわとしてしまう。護衛対象である少年に馬鹿にされては足蹴にしたのはつい最近の話だ。 そして訪れた今日という日。世間ではバレンタインのお返しをする日である。 「スミン、以前はバレンタイン……その、嬉しかった。ありがとう」 「いいえ、どういたしまして。」 優しいはにかみに心奪われそうになる。それをぐっと堪えて、ポケットから小さな箱を取り出した。掌に収まる大きさの箱をジャスミンに手渡し息を吐く。 「……以前見つけたペンダントだ。スミンの瞳によく似た色だったからつい、な」 柄にもない行動に苦笑しつつ、彼女の顔を見ることが出来ないのは多分抱いてはいけない想いが溢れてしまいそうだったから。 * * * 【シナモン×イクスちゃん】 波打ち際に立って遠くを眺めている少女を後ろから抱き締める。少し驚いたような声が聞こえたが、すぐにどうしたの?と幼い問い掛けが降り掛かる。 「ふふ、イクスが可愛くてね。抱き締めちゃった」 悪びれることもなくシナモンはイクスの首もとに顔を埋め、甘えるように擦り寄った。波間の反射が眩しいのかイクスは僅かに目を細める。そんな空気を察したのか、シナモンが離れてイクスの手を握った。そして木陰に誘うと今度は日が当たらないように身を屈め、にっこりと微笑む。 「今日はお返しの日だからね、好きなだけ僕の血を吸っていいよ?」 「シナモンちゃん……いいの?」 勿論と答えて、手の甲にキスをする。小さな声で僕のすべては君にあげる、と囁きながら。 * * * 【アルタルフ×ヒイラギさん】 手入れされた庭を通り、ガゼボで休息を取っている女性を見つける。目的の人物だ。思わず早足になり、最後には半分走っているような、そんな様子を見て女性ーーヒイラギは静かに笑う。 「焦らなくても大丈夫よ、アル。私は逃げないから」 「ヒイラギ様っ、お久し振りです!僕、ホワイトデー、教わりました!」 息を切らしているものの、アルタルフの表情は明るい。子供のような色。ヒイラギは読んでいた本をテーブルに置いて立ち上がり、アルタルフの腕をとる。アルタルフもそれに倣い、必死に勉強を行ったエスコートを披露した。庭を散策し、ヒイラギが花の名前や成り立ちを話す。アルタルフは真剣に話を聞き、頷き、時に驚きの声をあげた。 暫くして、最初のガゼボに戻りヒイラギは優雅にチェアへ腰掛けた。そこまで確認をすると、アルタルフは提げていた鞄から小さめのケーキボックスを取り出して机の上に置く。 「僕、ヒイラギ……為、作りました。味、トマさん、美味しい、言ってました。大丈夫です」 箱から苺をふんだんに使ったケーキを取り出して誇らしそうに笑い、ヒイラギへと差し出した。まだ慣れない呼び捨てに、少しだけ、照れながら。 * * * 【シャウラ×ラトゥムさん】 扉の前を陣取り、仁王立ちする男にラトゥムは溜め息を溢す。まったく面倒な男に好かれてしまったものだ。先程から殆ど同じ押し問答。何度断ってもめげない精神力には恐れ入ってしまう。 「何度言えばいいのかしら。別に貴方をプレゼントされても困るのだけど」 「いやいや、ちゃんとリボンも巻いてきたんだから持って帰れよ!照れんなって!」 確かに手枷には真っ赤なリボンが巻かれているものの、マントに隠れて殆ど見えていない。そして照れてもいない。ここまでくると自身の能力でさっさと逃げてしまえばよかったなどと脳裏を過る。シャウラは梃子でも動く気がないらしい。いい加減にしてほしいと口を開く少し前、目の前の男は予想に反して機敏に動き、左足を壁に打ち付けて退路を塞ぐ。 「今日は食わないでやるんだからさ。いい加減貰ってくれよ」 不敵に笑うシャウラの顔を見据えて、またも溜め息が溢れる。そして打ち付けられた左足をぎゅうっとつねり上げてお生憎様、と笑い掛けた。 |