Lucky 7



*各方面お子様借りております。



【フリージア×フラーウムちゃん】
とろりとした蜜のような光を放つ石。それを頂にあしらったペンダントを、逃げようとする彼女の首に掛けた。相変わらずなんで逃げるんだと唇に笑みを乗せて、喉の奥でくつくつと笑った。

「ぼくのもの」

彼女の首に輝くみどり色。それが逃げられても、拒絶されても、彼女がーーフラーウムがぼくだけのものだと主張する。幼稚で結構、欲しいものは手の中に入れておかないと気が済まないのだから。
頬を真っ赤に染めたその顔を見て、心の中が充足感で満たされる。

「……ボクは、フリージアのものじゃない」
「うそつき」

そんな言葉はぼくに必要ない。そう笑って、ぼくはペンダントに軽くキスをした。

* * *

【オリーブ×イヴちゃん】
本を一冊手に取った。今日も今日とて貸本屋に来る理由は、彼女の顔が見たいだけなのだ。しかし、気が付けば割と自分でも進んで本を読むようになった。慣れとは素晴らしいものだ。

「イヴ、今日はこれを」
「わかりましたです、ちょっと待っててください」

カウンターに差し出した本を受け渡す。その時にちょんと指先が触れた。びくりと肩が震えたのはどちらだっただろう。いや、どちらの肩も思い切り震えていた。それがなんだか面白くて、どちらからともなく吹き出してしまった。

「……悪い」

一頻り笑って涙を指で拭い、謝罪を口にするとポケットから飴を取り出して彼女の手に乗せる。意味は気付くな、そう願いながら。

* * *

【インディゴ×歌奈ちゃん】
真っ青なショップバッグを笑顔で渡すと、彼女の目が真ん丸に見開く。ぱちぱちと数度瞬きして、ショップバッグとインディゴを交互に見て、最後に小さな声で「なにこれ」と呟いた。

「ホワイトデーのプレゼント。歌奈の髪に似合いそうなリボン見つけたから買ったんだ」

だから早く開けて、早く使って、そう言いたげな瞳で見つめられ、歌奈はショップバッグから小さな箱を取り出した。真っ黒で、ところどころに銀の糸が織り込んであるのか角度を変えるときらきら輝いている。

「綺麗……だけど高かったんじゃない?」
「金額は秘密。だけど、おれの目みたいでいいでしょ。その色」

満面の笑みでそう告げる。ぼっと歌奈の顔が一気に真っ赤になるのは時間の問題だった。

* * *

【ヴィオレ×みずきちゃん】
彼女を椅子に座らせる。自分は恭しく膝をついて、彼女の手を取った。疑問符を浮かべる愛らしい顔に笑みを贈り、ちゅ、ちゅ、と手の甲から指先へと唇を落とす。驚いたのかびくりと震える彼女を諫めるようにもう一度顔を上げて視線を合わせると、みずきの顔がどんどん赤くなっていく。

「ヴィーさん、これ恥ずかし……」
「ふふ、僕の最上級の愛だから。遠慮せずに受け取って」

反論はさせないらしい。また唇を指に這わせてキスを贈り、優しく啄むようにひとつひとつを愛撫する。その度に小さく声が返ってくるのだから愛しくて仕方がない。
さて、調子に乗ってどこまで許されるか。いや、夫婦なのだから常識の範囲内なら許可されるだろう。内心で笑い、ヴィオレはぺろりと舌なめずりをした。

「可愛い僕のみずき。心の籠った悪戯は、好きかな?」

* * *

【ガデュー×ジャスミンさん】
子供のように目を輝かせて隣を歩くジャスミンを見る。久し振りに再会したからと彼女の買い物に付き合っているが、ショーウインドウに見える可愛らしいぬいぐるみや繊細な茶器にばかり視線が行く様が、僅かに胸を刺した。

「ガデューさん、あの茶器を見てください!」
「……ん、ああ。珍しいデザインだな」

自分の袖を引いて店先を指差す彼女は、いつにも増して楽しそうだ。なのに、それを喜べない自分が少し歯痒い。

「頼むから俺も見てくれよ」

無意識に滑り落ちた言葉は、どうやら彼女には聞こえなかったようだ。何か言いましたかと振り向いたジャスミンへ、なんでもないと営業スマイルを張り付けては自分の不甲斐なさに溜息が漏れるのだった。

* * *

【シナモン×イクスちゃん】
今日はスキンシップがたくさんしたいんだ。そう呟いたシナモンは目の前のイクスへと思い切り抱き着く。ひゃあと可愛らしい悲鳴が上がるとそれはそれはテンションが上がって、無防備な頬に思わず唇を寄せてしまう。

「シナモンちゃん、お酒飲んでる?」
「ううん、素面。けどイクスが好きだって感情が止まんない」

どうしようと言いながらも抱きしめた手を緩める気はないらしい。いつものナンパ癖を持つ彼らしくないとイクスが笑うと、シナモンは崩れ切ったその表情を更に崩した。

「どうしよう、僕、イクスが好きすぎて心臓壊れちゃいそう」

至極真面目な表情でそう言うものだから、イクスは思わず噴き出してしまうのだった。

* * *

【キリィ×アルピナさん】
何でもないただの一日。そんな一日を優しく彩る、彼女の淹れた美味しい紅茶。温かな湯気が香って、日々の疲れをじんわりと癒してくれる。まるで、彼女そのもののように。

「やっぱりアルピナさんの淹れる紅茶が一番ですねぇ」
「そう言ってもらえると、嬉しいな」

ソファの隣に座ってもらって彼女の肩に頭を預け甘えれば、とびきりに甘やかしてもらえる。どんな嗜好品よりも強烈で、病みつきになる彼女の優しさ。

「……こんなにも素敵なお嫁さんをもらえて、僕は幸せ者ですよぉ」

ゆうらり、ゆうらりと揺れる眠気の中で呟く。霞んだ視界の奥で、可愛いお嫁さんは頬を染めたように見えた。

* * *

【アルタルフ×ヒイラギさん】
遂に出来た。目を輝かせながら作品を確認して、大きく頷く。花はまだ詳しくないが、自分の中では会心の出来だ。壊さないように慎重に持ち上げて、丁寧にラッピングを施す。

「ひいっ、らぎ……さ、……ヒイラギ」
「ふふ、よく出来ました。今日はどんなご用件?」

呼び捨てはいつまで経っても慣れない。優しい微笑みの彼女を見つめて頬を染め、そっとラッピングされた箱を差し出す。ヒイラギが箱を指差し、アルタルフを見つめると視線で開けていいかの確認をする。それに気付いて何度も激しく頷けば、控えめな笑い声が聞こえた。
箱を開けると、プリザーブドフラワーが中央にちょこんと鎮座していた。幼子が作ったような出来だが、アルタルフの目は爛々と輝いている。

「僕、ヒイラギ……イメージ、作りました。会心、出来……ぱーふぇくと、です」

心が込められたそれに、ヒイラギが柔らかく微笑む。釣られるように、アルタルフも破顔するのであった。

* * *

【シャウラ×ラトゥムさん】
絶対何もしないとしつこく言いくるめて、手を握る。多分ここで約束を放棄したら腕どころか男の急所すら痛い目に遭いそうだったので、ぐっと堪える。いい香りがするが、ここは我慢である。

「なあ、」
「なにかしら」

返事が返ってくるとは思わず、思わずぎょっとしてラトゥムの顔を見た。彼女の表情はいつも通り涼しげで、きっと今愛を囁いても軽くあしらわれてしまうのだろう。
言葉を探すのに、数分の沈黙が落ちる。呼び掛けたのだって意味はなかったから、これは予想外だ。

「……どうしたら俺のモンになってくれんだよ」

絞り出した言葉が存外弱々しくて、ああ自分はやはり彼女に弱いと頭を抱えてしまった。

* * *

【恵琉×沙那さん】
兄さま、そう呼んだ自分の声がやけに甘ったるいことは自覚している。その兄の髪を一房取り、祈るように口付ければ彼は恥ずかしそうに視線を泳がせていた。

「兄さま、本日も変わらず美しい。……私は兄さまの弟で幸せです」
「大袈裟だよ。僕も恵琉が弟でよかったって思うし」

この感情が行き着く先を知っていても、彼はそれを口にしない。けれど、恵琉は容易くそれを壊してしまう。世界のすべてを捨てても、兄である沙那だけが世界だと囁いて。

「何度だって申し上げます。私だけの愛しい兄さま。兄さまが私の世界を彩ってくれるのですから」

歪んだ世界がふたりにとって正しい世界だと、そう、嘯いた。

* * *

【弥凪×ロゼちゃん】
キスしたいんだ。真っ赤になりながらそう言い放つと、ロゼはぱちぱちと瞬きをして首を傾げた。キスしたい、といっても彼からはよくキスされている気がする。

「……そう、じゃなくて。こう、気障スイッチ入ってないおれが、ロゼにキスしたいっていうか」

もごもごと口籠りながら呟く。いつもならさらりと甘い言葉と一緒にキスできるのに、いざ本心の自分でとなると恥ずかしさが勝ってしまう。これではただの思春期男子ではないかと突っ込んでみても、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
そんな様子にロゼはくすくす笑い、そっと目を閉じた。つまり、いつでもどうぞということだろう。

「へ、下手でも笑うなよ?」
「笑わないよ。弥凪くんのキスだもん」

ぎこちなく手を伸ばし、優しく唇を重ねる。それは、いつも以上に甘くて優しい味がした。




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