Lucky 7



*奏汰さん宅ヒイラギさん(ラフレシア♀)お借りしました



庭が一望できるテラスから、ほんのりと甘い香りが漂う。
緊張した面持ちの青年は、目の前で優雅に紅茶を楽しむ女性をじっと見つめ黙り込んでいた。そんな様子に気付いたのか、女性――ヒイラギは彼の方を振り向き、穏やかな表情で微笑んで見せる。

「とっても上手。香りが引き立って、優しい気分になるわ」

最上級の褒め言葉を貰い、星の名――アルタルフ――を冠する青年の表情は一気に明るくなった。まるで尻尾を振る大型犬のようだとヒイラギがくすくす笑えば、アルタルフも釣られてにこにこと嬉しそうに表情を崩す。
紅茶を淹れると勇んでやってきた彼の手元はおっかなびっくりだったが、何処で覚えたのかとてもよく出来ていた。花婿修行中だと意味も分からず胸を張る彼に、何処から突っ込めばいいのやらと思ったのは記憶に新しい。
――だって、まだプロポーズは受けていないのだから。

「アル、そこに座りなさいな。一緒にアフタヌーンティーを楽しみましょう?」
「っ、はい!」

びしりと背筋を伸ばしたアルタルフがちょこりと椅子に腰掛ける。性格や気性とは打って変わって、意外にもがっちりとした体格の彼が座ると非常にちぐはぐだ。次からはもう少し大きめの椅子を用意してあげよう、とヒイラギがぼんやり考えているとアルタルフは自分で淹れた紅茶を一生懸命冷ましている。

「熱いのは苦手?」
「苦手、違います。ヒイラギ様……あっ、ひ、ヒイラギ……前、かっこ悪い、見せない」

要約すると熱いと騒いでみっともないところを見せたくないのだろう。冷まそうと息を吹き掛けている時点であまり変わらないのに。
紅茶を楽しみ、アルタルフ手作りのクッキーを楽しむと、彼の様子がそわそわとしだす。どうしたのだろうか、首を傾げるとアルタルフの頬にさっと朱色が走る。

「ひっ、イラギ!」

急に大声を出され、ヒイラギの肩がびくりと跳ねた。それに気付かずアルタルフは勢いよく立ち上がり、彼女の前へと回り込む。そのままアルタルフが膝を折って傅くと、小さな箱を取り出して恭しく前に掲げたのだ。

「僕、結婚、してください!」

開かれた箱から見えるのは、何処でも売っていそうなこどもの指輪。なんの飾り気もない、陳腐なそれを見た彼女がどんな言葉を紡いだかは、ふたりしか知らない。




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