Lucky 7



*各方面お子様借りております。



【フリージア×フラーウムちゃん】
ちりり、と小さく鈴の音が鳴る。重い瞼を上げて、隣で眠る少女の首筋へと唇を落とす。彼女の瞼はまだ上がらない。
無理を言って、ごねて、拗ねて、大騒ぎして、隣を陣取った。だって、そうでもしないと彼女は逃げてしまうから。我ながら酷い話だけれど、それを変えるつもりは毛頭ない。
欲しいのなら、無理やりにだって奪う。幼い少年の中に芽生えたどす黒い感情はじぐじぐと熟れて、歪んで。
それだから、少年は知る事がない。方向性が違っても、互いに想い合っていることを。恋慕の情に身を焦がしているのが、自分だけでないことを。

「ねえ、フラーウム。どうすればキミはぼくの方を向いてくれるの?どうすれば、ぼくはこの苦しい愛をキミに理解してもらえるの?」

まるで懺悔のように。けれど身勝手に。
祈りににも似た感情の吐露は、未だに愛しいヒトへと届くことを知らない。

(──首筋への執着)

* * *

【オリーブ×イヴちゃん】
繕い物をしていたら、手元に影が差す。誰だろうかと顔を上げると、そこにいたのは想い人の少女。一度目が合ってしまうと視線を逸らすのも不自然だろうかと手に持っていた布を机に置き、空いていた自分の隣を指差した。

「珍しいな、こんな場所にイヴがいるの」

別段意図した言葉ではなかったものの、口から滑り出した単語に彼女はダメでしたかと首を傾げる。惚れた弱みだろう、思わず可愛いと言いかけた口を覆って軽く首を振る。
何となくだが、彼女は貸本屋の中に詰めているイメージが強い。けれど年頃の少女、カフェに来ることだっておかしくないはずだ。

「イヴはここのカフェオーレが好きなんです」
「美味しいもんな」

軽く頷いてみると、店員がやってきたので彼女が好きだと言ったカフェオレをふたつ、注文してみた。繕い物のことは忘れて、彼女と少しお喋りをしたって悪くないだろう、と自分に言い訳をしながら。だからこっそりと、彼女の髪の先へとキスを落として恥ずかしさのあまり顔を背けてしまうのだ。

(──髪への思慕)

* * *

【リゼットさん×ネモフィラ】
かくり、かくり。頬杖をついた頭が揺れて、ずるりと滑り落ちては元に戻る。先程からずっとこの調子だ。ベッドに戻ればいいのだが、戻りたくない。目の前に置かれたホットミルクは既に冷めて、表層は膜を張ってしまっている。
帰ってくると連絡を受けたのは夕方だったが、先に寝てていいからとも言われていた。だが、矢張り何となく一番に「おかえり」を言いたくて。どこの少女漫画だと頬に熱が籠ってしまうのはこの際無視して、何とか起きていようと試みるも結果は芳しくない。
何度目か分からない浮遊感。その度眠い目を擦って頭を手の上に戻す。そんな時だった。

「寝てろって言ったのに。ベッドでキス出来ないだろ?」

そんな囁き声と共に肩に掛かる布の感触。不意打ちのふたつにびくりと背を震わせて眠気も吹っ飛んでしまった。

「リー、おかえり」
「ん、ただいま。ネモ、待っててくれたの?」
「最初にお帰りって言いたかったのさ」

彼の指先にキスをして、もう一度おかえりと囁く。
動いた拍子に机が少しだけ揺れて、ミルクがちゃぷん、と波紋を広げた。

(──指先への賞賛)

* * *

【雨藍さん×ゼラニウム】
ふらりと何処かと行ってしまいそうな彼の服を思い切り掴んだ。おや、という言葉は聞かなかったことにして引っ張り、背後から勢いよく抱きしめる。残念なことに自身の方が背は低いので格好は付かないものの、これはこれで仕方がない。
ゼラ君、という声が聞こえた。けれど聞こえないふりをして抱きしめを強くした。ぎゅう、と音が出てしまうのではないかという程に。そのまま背中に顔を埋めて、ぐりぐりと額を押し付ける。

「……いい匂いする」
「おや、本当かい?……けれど、そろそろ放してくれないかな。挨拶にお尻も触っていない」
「いいよ触らなくて。今日はこのままでいさせてくれ」

こうやって傍にいる時くらい、と小さく呟いてもう一度彼の背に顔を埋めた。悔しいが、彼の存在を感じているだけで酷く自分の心が落ち着いてしまうのだから。

「恋とか愛って、すごいな」

ぼそりと呟いてその背へとキスを贈れば、彼はくすりと小さく笑っていた。

(──背中への確認)

* * *

【メテオールさん×オランジュ】
王宮の庭をふたりで散策し、季節の花が咲いていると微笑ましい話を取りとめもなく紡ぐ。幸せで優しい日常に、ふとオランジュが呟いた。

「メテオールさん、きす、をしてもよろしいでしょうか?」

突然の妻の発言に、メテオールの目が大きく開く。彼女の言葉も表情もふざけている様子は一切なく、真剣そのものだ。突然どうしたのだろうかと思いながらも足を止めて近くのテラスへと移動した。
テラスから見える秋晴れの日差しが朝露に反射してきらきらと落ちる。からりとした空気は凛と澄んでいて心地がいい。

「あのですね、好きの気持ちを……こう、溢れて止まらない感情を、キスに乗せたら伝えられるのかな、と」

書物から得た知識ですけれど、と続ける彼女の耳をよく見るとほんのりと紅くなっている。自分で言っていて相当恥ずかしいのだろう。メテオールは小さく笑って、どうぞと頬を傍に寄せる。
失礼して、と囁きながら小さなリップ音と共にキスをする。途端にぶわりと耳どころか顔まで真っ赤になって。

「お、オランジュ。顔真っ赤だぞ」
「め、メテオールさんも……」

揃いも揃って顔を赤くして。それがなんだかおかしくて。どちらともなく吹き出して、少しだけテラスの下でと手を握り合って微笑んだ。

(──頬への親愛)

* * *

【インディゴ×歌奈ちゃん】
目にも止まらぬ速さ、とはこのことだろう。普段からせっかちな部分はあるが、普段以上だ。普段以上の速さで、唇を奪われたのだから。
反応する間もなく、いや、もしかしたら反応する間はあったかもしれない。しかしインディゴはぺろりと自分の唇を舐めて潤し、幸せそうに目を細めるのだ。

「歌奈、だーいすき」
「い、いきなり、」
「好きすぎて、いつでもキスしたくなっちゃうんだよ。おれの好き、歌奈にいっぱいあげたいから」

即物的過ぎるとツッコミを入れる存在はここにはいない。だって、この場所にはふたりしかいないのだから。
キスをした態勢のままゆっくりと距離を詰める。もともとなかった距離は、静かに、静かにゼロへと変わった。逃げ場はない。だって、後ろは壁なのだから。
小柄で狡猾な少年は壁に両手をついて金の美女を捕らえ、ゆるりと唇に弧を描いた。

「ねえ、愛しすぎて苦しいんだ。歌奈、もっとキスさせて?」

(──唇への愛情)

* * *

【直くん×ローズ】
ついてる、と唇についていたビスケットの食べかすを指で拭う。そのままぺろりと舐めると、一瞬ローズの動きが止まる。どうしたのだろうかと直が目を瞬かせると、ぽぽっと彼女の頬が赤くなった。

「……は、恥ずかしいことしちゃった」

ついうっかり、で恥じらうものの時既に遅し。頬を抑えて視線を右往左往させ、誤魔化すようにはにかみ笑い。
そんな様子を知ってか知らずか、彼はにこにこと可愛らしく笑ったまま残りのビスケットを頬張る。ぱきん、ぱりぱり。咀嚼音が聞こえ、差し出された自作のビスケット。

「ローズちゃんも、どうぞ」
「おいしい?」
「うん。だってローズちゃんが作ってくれたから」

口の前に差し出されたビスケットを頬張り、自分のスイーツの出来の良さに先程の失態を忘れそうになってしまう。小さめの一枚を食べ終わると、お裾分けのように唇へと触れるだけのキスをする。
少し驚いたような表情が、少しして優しく蕩ける。なんだか幸せな気分だ。

(──唇への愛情)

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【ヴィオレ×みずきちゃん】
水溜まりを蹴り、飛沫が舞い散る。前日までの雨模様が嘘のように晴れているが、水溜まりのお陰で雨があった事実は覆すことは出来ないだろう。
ぱしゃぱしゃと楽しそうに水を飛ばす妻の姿を眺め、ヴィオレは幸せそうに目元を弛ませる。彼女がいなかった頃、どうやって暇を持て余していたかなんてもう思い出せそうにない。

「ヴィーさん、水浴びしないのー?」
「ああ、そろそろしようかな。みずき、風邪をひかないようにね」

立ち上がって、水溜まりを蹴る。ぱちゃん、雫が跳ねて光を受ける。万華鏡のように光を反射しては虹色を生み出し、その一瞬にヴィオレはほうと息を漏らした。

「この一瞬の宝石を、きみに飾ってあげたくなってしまう」

此方へと向かっていた彼女を捕まえて、抱きしめる。狂おしい程の愛情を込めて手首へとそっと唇を落とす。

「え、え?ヴィーさんまた急に……っ、」
「イタズラ成功。なんてね」

海よりも深い愛は、悪戯なんかでは誤魔化せない。
溢れ出た愛しさは、お道化てそっと隠して笑ってみせるのだ。

(──手首への欲望)

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【ミツキくん×リフェール】
仕事で疲れたとぐったり横になるミツキの為に自身の膝を提供してから早数分。男の膝など硬くて痛いだろうなあと彼の頭を撫でてぼんやりと考える。比較的自分自身も筋肉はある方だし、前に仲間にも触られて硬いと吐き捨てられたばかりだ。

「痛くない?」
「大丈夫」

相当疲れているのだろう、いつもより口数は少なく目も開く様子がない。リフェールには分からない、警官故のストレスもあるのだろう。そう思うと、年上のお兄さん風を吹かせたくなる性分がむくむくと顔を覗かせる。
少し身を捩って、目を閉じたままの彼へと顔を近付け、鼻梁へとキスを落とす。一回、二回、三回。ちゅ、ちゅ、と音が鳴ってしまって彼の目がうっすら開いてしまった。

「リフル?」
「お疲れなミツキに、お兄さんからプレゼント」

本当は自分がしたかっただけだけど、と内心でこっそりと付け足して満足そうにリフェールは笑った。

(──鼻梁への愛玩)

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【泉さん×ミンク】
今日は難しい本に挑戦すると意気込んでいる赤毛の少女の背中にやれやれと溜息を吐くのは、この貸本屋の店長である。そんな店長の様子に気付いたミンクが振り向きこてりと小首を傾げた。

「泉くん、どうしたのぉ」
「いや、せめて文字の大きい本を選べと思ってな」

その方が読みやすいという彼の意図がきちんと伝わったのか伝わっていないのか、ミンクは意気揚々と頷いて何処かの本棚へと向かっていく。何を借りるのかと視線で追うと、彼女が持ってきたのはいつもと同じように絵本だった。
突っ込むべきかどうか迷うと、ミンクは嬉しそうに頬を染めて絵本を泉へと差し出す。

「これねぇ、表紙の男の子が泉くんに似てる気がしたんだぁ」

アップで描かれた少年の額へとキスし、満足そうに鼻歌を歌って席へと行ってしまう彼女を見つめ、苦笑するしかなかった。

(──額への友愛)

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【ガデュー×ジャスミンさん】
靴擦れで痛々しい傷を負った彼女の足をそっと取り、悪化しないようにと丁寧に処置を施す。契約で守っているとはいえ、こんなことは本当はしなくたっていいのだ。今までだって、こんな風に尽くしたことなどない。けれど、けれど。

「こんなになるまで黙ってなくていい。ペースが速いと思うのなら言え。その程度で怒らない」
「す、すみません……」

ああ、違うんだ。こんなことが言いたいんじゃないんだ。口の悪い自分の性格を呪い、しかし顔になど出さない。伊達にポーカーフェイスだと言われてはいない。
黙々と処置を終え、包帯の緩みがないかを確認して顔を上げる。不安と痛ましさで揺れている瞳が綺麗で、直視できない。その瞳が美しすぎて、欲しいと思ってしまった。

「……スミン、男は狼だ。あまり心を許すなよ」

心と反対側の言葉を紡いで、触れている足の甲へとひとつ、口づけを捧げた。

(──足の甲への隷属)

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【イナさん×クルック】
旅の途中で立ち寄った宿で、ふたり揃ってベッドに飛び込み大きく息を吐く。ここ数日歩き詰めで、ベッドなどいつぶりだろう。安宿だが思いのほかふかふかの肌触りにどちらからともなく溜息が零れ落ちた。

「やべぇ、最高……」
「久し振りの寝具は堪らないな……」

思うことは同じようで、顔を上げて視線が絡み、思わず吹き出してしまった。愛を育むことも一瞬だけ脳裏を掠めたがふかふかの毛布に包まれて寝てしまいたいというのが共通意見だった。
簡単に根支度を済ませ、揃ってベッドに潜り込み身を寄せ合う。とくとくと小さく聞こえる心音が緩やかな眠りの道標となってくれる。

「イナ、」

名を呼び、肌蹴た胸へとキスをした。
一瞬触れるか触れないか。その程度のささやかな接触。

「いつまでも愛してるよ」

胸に溢れた愛を。吐き出しても吐き出しても消えることのない無尽蔵の愛を。

(──胸への所有)

* * *

【シナモン×イクスちゃん】
目、瞑って。そうそう、そんな感じ。そのまま少し動かないでね。うん、だめだよ。まだ開けないで。僕がいいよって言うまで我慢できるよね?
そういいながら、深呼吸。いつもの慣れた調子で出来ないのは緊張しているからだろうか。そっとイクスの肩を掴んで閉じた瞼の上に唇を当てる。ちゅ、とリップ音が鳴る。

「まだ、いいよって言ってない」

驚いて目を開けてしまった彼女に、ばつが悪そうに呟いた。普段の自分ならノリと勢いでどうにかなりそうだったのだが、勢いだけでキスをしたら軽い男だと思われてしまうかもしれない。

「シナモンちゃんって、意外とシャイ?」
「イクスの前でだけだよ。こんな風にどうしようって右往左往しちゃうの」

肩を竦めてみても、彼女は先程の驚きは過ぎ去ってしまったようで。可愛らしく笑うその表情を眺めてシナモンも釣られて微笑んだ。

(──瞼への憧憬)

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【九浦くん×薫】
デートしよう、と誘われて年甲斐もなくはしゃいでしまった時の自分が恥ずかしい。穴があったら入りたい、というやつなのだが当時のそのテンションがなかったらデートに頷けなかったのだから結果オーライだろう。
身形を整え、鏡に映った自分の髪を撫でつけ(結果は散々だった)、不格好なところはないかと確認に確認を重ねる。デート必勝法!なる本も読んでみたが、生憎と彼女にはハードルが高すぎたので見なかったことにした。
家を飛び出し、待ち合わせの場所へ。足が遅いのは今に始まったことではないので、きちんと予定より早く到着する時間を計算済みだ。
しかし既に先客はいて、彼は薫に気付くとひらひらと手を振っていた。

「お、遅くなってしまいました!すみませんっ」
「約束より全然時間あるって。薫ちゃん早めに来ると思ったから先手打ってみた」

そうやって笑う彼の仕草が素敵で、胸がきゅうっと締め付けられる。差し出された腕をそっと取り、気付かれないようにキスをして、恥ずかしさを寒さのせいに誤魔化して。
こんな素敵な日々が、ずっと続きますようにと願った。

(──腕への恋慕)

* * *

【キリィ×アルピナさん】
抱きしめて、彼女の体温を感じる。甘くて、優しくて、思考回路がとろりと水飴のように蕩けていく。こんなに素敵なお嫁さんをもらえたなんて幸せ者だ、と満足そうに息を吐き出すと腕の中で彼女がもぞもぞと動いた。

「キリィくん、は、恥ずかしいな……」
「ふふ、アルピナさんはいい匂いがするから離してあげませんよお」

髪の隙間から見える耳を食むように口付けて、もう一度抱きしめ直す。不意打ちのように耳を掠めたからか、彼女の唇からはひゃあ、なんて可愛らしい声が漏れていた。

「ああ、可愛い。可愛すぎて、僕は本当に幸せ者ですよお」

この幸せを何度も噛み締めるように、小さな呟きは続くのだった。

(──耳への誘惑)

* * *

【アルタルフ×ヒイラギさん】
今でもどきどきする。彼女が、ヒイラギが、奴隷だった自分とそういう関係にあるという事実が。立場を気にせず「アルタルフ」という男を愛してくれた彼女への深い愛が溢れて、時に涙になることもある程だ。
孤高の薔薇のような彼女が、自分に全幅の信頼を置いて肩に頭を預けて転寝をしているだなんて、昔の自分に言ったら信じてくれるだろうか。いいや、そんな馬鹿なと信じてくれないだろう。

「ヒイ、ラギ?」

返事はない。どうやら転寝から本格的な睡眠に落ちてしまったようだ。最近は忙しそうにしていたから、その疲れが出てしまったのだろう。
アルタルフは慎重に自分の身体を抜いて彼女を支え、壊れ物を扱うように抱き上げる。お姫様抱っこ、と呼ばれるかたちで彼女の寝室へと向かい、そっとベッドへ彼女を横たえる。
彼女が眠るその空間だけ、まるで童話の世界のようだっだ。菫色の髪が静かに散らばり、閉じられた瞼の奥にあるふたつの色は今は見えない。

「あいして、ます」

愛しさを込めて眠る彼女の手を取り、その甲へ口付けた。
この気持ちが、愛しさが、彼女の夢に優しく反映されますようにと願いながら、もう一度キスをするのだった。

(──手の甲への敬愛)

* * *

【シャウラ×ラトゥムさん】
牙がその首を狙う。まるで獣のように。けれど彼女はいとも容易くその牙を躱し、面倒くさそうに肩を竦めた。
もう一度噛み付こうと脚に力を入れる前にやめて頂戴と言葉が遮る。止めたくても止められない。病みついた癖は着実に彼女を欲して、確実に失った絶望に狂う。そんなぐちゃぐちゃの未来しか見えない。

「俺はお前が好きだ、愛してる。食いたいくらいに」
「そう」

さらりと受け流されても、これは本能だ。欲望だ。抑えることなど出来やしない。愛する者を喰らう快楽を知っている以上、避けては通れない。
けれど。
けれど、この胸の奥に残る虚しさは何だ。
言い逃れすら出来ない感情が行き場をなくし、泣き続ける。キスひとつまともに出来ず、「愛せ」も「愛している」もないのだと理解しても理解などしたくなかった。

(──首筋への執着)

* * *

【弥凪×ロゼちゃん】
サイバー空間での逢瀬を繰り返して、少しずつ気障でないただの弥凪として彼女に素の自分を曝け出して。あまり普段と変わらないと笑っていた彼女の表情が愛しくて。
気が付いたら、彼女の唇に自分の唇を重ねていた。
はっとなった時にはもう遅かった。柔らかい唇の感触が残って、真っ赤になって。

「あ、いや、その、」
「弥凪くん……」

潤んだ彼女の瞳が、どきどきしてしまいそうな程綺麗で。
今度はロゼの手を握りしめて、そっと訊ねた。

「キス、していい?」
「……うん」

閉じた瞼の奥で、そっと。
優しく甘い口付けは、幸せと恥ずかしさが同居しながらも幸福感が体中を駆け巡るような錯覚を覚えるものだった。

(──唇への愛情)




Lucky 7