Lucky 7



*さあやさん宅是朗くん(★テールナー♂)お借りしました



「うん、明日な。うん、待ち合わせはその銅像の前で大丈夫。あそこ、意外と人来ないんだよ」

電話越しの電子音はあまり温度を感じない。電子の世界ではあんなに温度を感じるのに、不思議な話だ。
初めてリアルで彼女に――彼に会う。話に聞いた近場の、出来るだけ人の少ない場所を選んだ。だって、喧騒に飲まれたら折角会えるのに勿体ないから。
少し聞き取りづらい声に、成程確かに別人みたいだと思いつつも根底で『ロゼ』だと確信する。不安がる声に大丈夫を何度も語り掛ける。
大丈夫、怖いならおれが抱きしめてあげるから。
大丈夫、不安ならおれが手を繋いであげるから。
だから、怖がらないで一歩前に進んで。繋いだ手は何があっても離さないから。

「ねえ、電話を切る前にひとつだけ聞いていい?」
『……? うん』
「きみの本当の名前、教えて」

明日会った時に、名前を呼べないから。静かな声で尋ねれば、息を呑む音。数秒の空白が鼓膜を揺らして、沈黙が破られる。少しだけ掛かったノイズが、空気を読んだようにすうっと消えた。

『……是朗』
「ぜろ? オッケー、覚えた。……明日、言いたいことがあるから待ってて。ぜろに、会いに行くから」

ひとつだけリップノイズを贈って、ぷつりと電話を切る。
我ながらあんな気障なことをよく言えたもんだ。恥ずかしさとやっちまった感をひしひしと覚えながらも、明日が楽しみ過ぎて自然に頬が緩んでいた。




Lucky 7