Lucky 7



部活終わり、紫はベッドに腰掛けて大きく息を吐いた。
相部屋の後輩がどこかへ出掛けてしまったので、部屋はしんと静まり返っている。開け放った窓から流れ込む風と木々の騒めき、独特の静寂が心地よい。
夕食の時間までこのまま寝てしまおうか。そんなことを考えながらベッドへ寝転んだ。沈むマットレスの感覚にとろとろと微睡みを覚え、そういえばバナナクリップを外していないなと寝返りを打ち後頭部を探る。
眠気と格闘しながらクリップに指を掛けたタイミングでノックの音が部屋に響く。後輩ならばノックせずに入ってくるだろうと思い、どうぞ、と少し寝ぼけた声を掛ける。
案の定、入ってきたのは別の人物だった。

「あ、珍しい。紫ちゃんったらおねむモード?」
「……風に当たったら疲れて眠くなって」
「夜更かししたでしょ? お肌が荒れてるし、目の下も隈があるじゃない」

綺麗な所作で紫の元まで歩いてきたのは同級生で同じ部の姫路だ。
緩くウェーブした桃色の髪を揺らしながら紫の隣に腰掛け、寝転んで動こうとしない彼の目尻を指先で撫でる。紫は擽ったいのか少し身じろいだが、それでも起き上がる気はないようだ。

「姫……クリップ」
「やだ、甘えたさん!?」

きゃー! と黄色い悲鳴を上げる姫路を見上げ、紫が頷く。その様子を見た姫路は少し目を瞬かせ、ぱちりとバナナクリップを外してやった。
長時間留めていた髪には癖がついている。その髪に指を通し、楽しそうに笑う姫路に今度は紫が目を瞬かせる番だった。

「楽しいか?」
「ええ、楽しい。紫ったら可愛いんだもん」
「……姫の方が可愛い」

そう言いながら紫がのっそりと起き上がる。

「やっと起きた?」
「ん。……起きた。姫の前じゃなかったら、もっと早く起きた」

目つきの悪い瞳が姫路を捉える。
あ、と彼が声を発する唇を言葉ごと塞いで飲み込んだ。頭をしっかりとホールドし、押し倒さん勢いで力を籠めて舌先を吸い上げながら綺麗な濃い桃色の瞳を見つめ、唾液を飲み込む。
ちゅくりと甘ったるい水音が頭蓋骨の内側で響き、うっとりと目を細めると唇を離した。ふたりの間に繋がった銀糸が夕暮れの光を浴びて輝き、とろりと落ちて切れる。

「はあ……、……。俺にとって、姫はトクベツだから。……だらしない俺を見られても気にならない」

そっと息を吐くように。一瞬で真っ赤になった可愛い恋人の目尻にキスを落とせば、更に好きの感情が溢れる気がした。




Lucky 7