Lucky 7



*ひふみさん宅九浦くん(★クチート♂)お借りしました。



くるりと縫った布をひっくり返す。そうすると不格好ながらに悪くない出来の巾着袋が生まれた。ところどころがよれて歪だが、使う分には問題ないだろう。
手元にある巾着と、先に作ったもう一つを見比べる。
二回目ということで多少のコツは掴んだのか、先ほどよりはよっぽどマシだ。なにより布を裁断した時のほつれがない。大きな進歩。ということで一応は目を瞑った。
これ以上凝り出すとキリがないことをよく知っている。なにせ、勉強も似たような状況なのだ。一度気になると歯止めが利かない。
溜息を吐こうと思って目を閉じると、勉強中に眉間に皺が寄っている、と笑いながら額をつついた彼の顔を思い出して思わず赤面してしまう。ぶんぶんと首を横に振って、熱を冷まそうと思ってもなかなか上手くいかず。これから会うというのに、真っ赤だと恥ずかしい。
手遊びに、少しでも可愛く見てもらいたくて毛先を揃えたばかりの髪を手櫛で梳く。ぴょんぴょんと外に跳ねる髪は相変わらずだったが。
時計を確認して、荷物を確認して、忘れ物がないかチェック。お気に入りの靴を履いてぱたぱたと街へ繰り出す。途中ですれ違った近所の人に挨拶をして、待ち合わせのカフェへ。待ち人は既にオープンテラスを陣取って雑誌か何かを読んでいる。気が付かないかな、とそろりと近付くと手を伸ばしてぎりぎり届かない距離で、彼の口元がふっと笑った。

「薫ちゃん、気付いてるから」
「あらあら、気付かれてしまいました?」
「忍びならこのくらいは当然、でしょ?」

完全に目線を上にあげた彼の朱い瞳と視線がかち合う。それだけで気分が上擦って、どこか歌いたくなるような心地だ。
向かいの席を指差されていそいそと腰掛ける。まだこういった洋風の可愛らしいお店は慣れない。物珍しそうに視線を彷徨わせると、雑誌をテーブルに伏せた九浦が頬杖をついてこちらを見ていた。

「楽しい?」
「九浦さんと一緒だから照れてしまいますが、こう、楽しい……です」
「そっか」
「はい」

会話が長く続かなくても、居心地がいいのはなぜだろうか。それはきっと、相手を想っているからだ。甘酸っぱい気持ちが胸をくすぐって、むず痒い。
そんなむず痒さを誤魔化すように、薫は鞄の中から小さな袋を取り出した。小さくシンプルな紙袋にリボンをかけただけの素っ気ないものだが、精いっぱいの想いを詰めたプレゼントだ。

「あの、九浦さん」
「ん?」
「大したものではないのですが、よろしければ受け取っていただけないでしょうか?」

おずおずと袋を差し出して様子を窺う。
「開けていい?」の言葉に頷いて、包装を開くその手を見つめた。男性らしいしっかりとした手。自分の方が年上だが、頭を撫でられると嬉しくなってしまう。
かさり、紙の擦れる音と共に現れた作り立ての巾着袋。オレンジ色の布と、緑色の刺繍糸。

「これ、薫ちゃんが作ったの?」
「ぶ、不格好ですが……頑張りました」
「薫ちゃんイメージだ」
「私の分は、九浦さんをイメージして」
「ほんと?」

驚いたような彼に、包んでいない巾着を差し出す。
臙脂色の布に黄色と黒の刺繍をした、自分専用の巾着だ。しかしいざ見せると恥ずかしい。

「ありがとう、大切にするよ」

その言葉が嬉しくて、大きく頷く。
むず痒かった胸は、今にも火傷しそうなくらい熱かった。




Lucky 7