Lucky 7 *各方面お子様借りております。 【フリージア×フラーウムちゃん】 組み敷いた少女の顎を軽く撫で、くつくつと笑う。真っ赤に染まった頬が艶かしい。このまま強引に奪ってしまいたい。手首を掴むその力を強めれば、痛みに呻く声。 「フリージアっ、やめっ、」 「やめないよお。だって……キミが逃げちゃうじゃないかあ」 キミがぼくを好きかなんて関係ない。ぼくがキミを欲しいから。なんて言ったらどう反応してくれるんだろう。怒る?嘆く?それとも、笑う? 「堪らない。堪らないよお、キミが愛しすぎて、粉々にしたいくらいに」 恐怖に歪む瞳に映るぼくの影。フラーウム、キミが見るぼくは、どんな風に切り取られているのだろうか。 * * * 【リゼットさん×ネモフィラ】 台所に立ち、エプロンを身に付けると気合いが入る。何せ久々に振る舞う手料理、手を抜くわけにはいかない。手早く下拵えを進めて鼻唄混じりにフライパンを振ると、後ろから手元を覗く視線。 「はいはい、リー。まだ終わらないよー」 「めっちゃいい匂いするんだけど。ネモ、料理の腕上がった?」 褒められるのは悪い気がしない。嬉しい気持ちを隠さず鼻唄を続けると、首に手を回されて暇だの詰まらないだのの声。付き合い始めてから積極的になってくれたのは嬉しい。けど料理を邪魔されるのは宜しくない。だって、美味しいものを食べてもらえないから。 「ほら、料理終わって食べたらたっぷり遊ぶよ!」 振り向いてにっと笑えば、リーも嬉しそうに笑ってくれた。 * * * 【雨藍さん×ゼラニウム】 思わず手を引いた。振り向いてほしくて。ふらりといなくなるあんたの、気を引きたくて。いや、分かってる。おれは男だし、女みたいに柔らかくないのは。 「ゼラくん、私は何処にもいかないさ」 「ほっ、ほんとか!?」 いなくなるじゃないか、いつでも。でも、気が付くとそばに来て、するりとおれの心に忍び込む。おれでいいのか、と呟いたらゼラくんでなければ、と声がした。悔しいけど、格好いい。 「…………おっ、おれは、雨藍がいてくれないと困る!からな!」 強がりがどこかへ逃げて、馬鹿な本音がこぼれ落ちた。目の前の男は口許に袖を運び、楽しそうに微笑んでいた。 * * * 【メテオールくん×オランジュ】 少しばかり焦げてしまったクッキーを、美味しいと笑ってくれる。本当は渡すつもりなんてなくて、でも見つかってしまったから素直に言うしかなくて。 「め、メテオールさん。駄目です、そんな焦げてしまったものなど……」 「……ん、美味い。けど苦い、次は頑張れ」 なんて笑いながら言ってくれるから。期待しないでくださいね、と口ごもる。無理な相談だ、と笑う。そんな他愛のない時間が何よりも愛しくて。 「メテオールさん、わたし、幸せです」 優しすぎるあなたへ嫁げたことが、何よりの幸せなのです。 * * * 【ヴィオレ×みずきちゃん】 いつでも僕の心を揺らすきみ。くるくると変わる表情が、狂ってしまいそうになるくらい好きで。けれど、他の人へ笑い掛けるきみを見てしまうと、自分が壊れるくらいの嫉妬に苛まれる。 「きみは僕の妻なんだ、何処へも行かないで」 驚くきみを抱き締めて。泣き叫ぶまで、きみへの愛を囁いて。無防備な優しさを、僕色に染め上げれば、永遠に手に入るかな。 「ヴィーさん……ど、どうしたの……?」 「…………なんてね、驚いた?」 ぱっと手を離して、おどけたように笑う。愛してるのは本心さ。けれど狂った僕は、本当か嘘か。今日もきみへ、愛と悪戯を。 * * * 【ガデュー×ジャスミンさん】 商売道具である剣と盾を手入れしていれば、背中に触れた柔らかな感触。こんな時に来るのはふざける例の三馬鹿か、物応じしない世間知らずなお嬢様か。声を掛けてこないと言うことは十中八九間違いないだろう。 「もう少しで終わる」 「焦らなくて大丈夫ですよ」 用はないですから、と落ち着いた声が胸の奥に沈み込む。雇い主と傭兵。元と言えどそんな関係である以上、私情は挟まない。なのに、彼女の声は酷く俺の心を抉る。 「スミン、お前といると俺は素直になりすぎる……」 そう呟くと、それでいいじゃないですかと優しい言葉。そうじゃない。そう言えないのは多分、俺がお前に惚れているからなんだろう。 * * * 【イナさん×クルック】 旅先で水辺を見付けると、意味もなく足を浸してしまう。冷たい感覚、それに心を喩えて歩を進める。泳げないのに沈んでしまうのは自分の生まれを嘆いてか。なにも感じない心を埋めてしまうように身体を水へ落とし、瞼を閉じる。 「クルック!!」 悲鳴のようなそれ。いつも引き揚げてくれるのは、今にも泣きそうな大男。死にはしないのに、手を引いて日の当たる場所へ連れ戻し、私を力の限り抱き締めるのだ。 「……イナ、私は死なないよ」 「嫌だ……止めろよそんな馬鹿みたいな癖…………」 子供みたいな表情で言うものだからそれ以上何も言えなくて、イナの髪をそっと撫でる。旅の連れは優しすぎて、私の凍った心も融けてしまいそうに感じた。 * * * 【シナモン×イクスちゃん】 日課のナンパをしていると、可愛らしい少女を見付ける。あの姿は見間違いではないだろう。声を掛けていた女性に優しい謝罪を投げ掛けて足取り軽く少女の前へ歩み出た。 「やあ、可愛いお嬢さん。これから僕に君の時間をくれないかな?」 「シナモンちゃんだ、またナンパしてたの?」 また、という言葉はこの際聞かなかったことにしよう。どれだけナンパをしても、イクス以上の女の子には出逢えないのだから。 「イクスが好きそうなお店を見つけてね。デートしたいと思っていたんだ」 彼女の小さな手をとって、恭しくキスを落とす。可愛い小さなお姫様、僕と一緒に。そんな言葉を囁くと、イクスは可愛らしく笑うのだった。 * * * 【九浦くん×薫】 オープンテラスのカフェなんて滅多に来ないからそわそわとしてしまう。待ち合わせは午後1時、まだ15分は時間がある。店内の時計に目を遣ると、大柄な男性がふたり近付いてきて。一緒に遊ぼうとか、楽しいからとか、断っても断ってもしつこく話し掛けてくるからどうしようもなくて。ほとほと困り果ていると、ぽんぽんと男性の肩を叩く人影。 「あのさ、俺の彼女になんか用?」 「えっ、く、九浦さん!?」 凄みのある睨みに怯えた男性たちは尻尾を巻くように逃げてしまった。ほっと一息つくと九浦さんは空いている椅子に腰掛けて遅くなってごめんねと呟いた。怖かったでしょ、とも。 「でも、九浦さんが助けてくださったじゃないですか」 嬉しいです、と素直に答えると九浦さんの耳が真っ赤になっていることに気が付く。どうしてだろうと首を傾げるものの、結局答えはでないままだった。 * * * 【アルタルフ×ヒイラギさん】 好きの思いを伝えて、晴れて恋人となれた。身分の違いに拒絶をされると思い込んでいたから嬉しさが止まらなくて。会えば抱き締めて、キスをして、愛してるを囁いて。 「まったく……アル、何処でそんな言葉を覚えたのかしら……」 「ヒイラギ様、喜んでもらう、覚えました……!」 誇らしく胸を張ると、呆れたような面白がっているような声。それが少し悔しくて、さっきよりも抱き締める力を強めた。苦しいと言われても少し、無視。 「好き、変えられない……から、僕、ヒイ、ラギ……愛してる……から……」 脈絡のない愛の告白は彼女の頬を染め上げるには充分だったようで。胸の中に抱き止めた彼女の頬が自分の髪の色のようで、胸に沸き上がった欲望が、満足そうに笑い声をあげた。 * * * 【シャウラ×ラトゥムさん】 今日くらい、何もしないからと懇願して彼女の胸の中に埋まった。子供のように泣きじゃくれるのは、今だけで。顔をあげてしまったら、いつもの飄々とした俺が笑っていないといけないから。怖い夢を見た。何人もの犠牲者がひたすらに俺を詰り、責め、殺されそうになって、目が覚めた。 「貴方に殺さないでくれと懇願した人は、助からないのにね」 「分かってる……分かってるんだ……」 素直な毒すら、痛みに変わる。彼女なりの優しさだと知るのは、いつだろう。いや、優しさですらないのかもしれない。 「…………俺がこうやって泣くのはお前の前だけだからな。誰彼構わずぴーぴー泣いてる訳じゃねぇ」 女の前で泣くのは自分のプライドにも関わる気がしたが、この際どうでもいい。夜が明けるまで、ラトゥムは俺を突き放さないでくれるから。 |